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精神医学

発達性トラウマ障害

発達性トラウマ障害(Developmental Trauma Disorder, DTD)とは?

発達性トラウマ障害(DTD:Developmental Trauma Disorder) は、幼少期に継続的なトラウマを受けたことによって、心や脳の発達に深刻な影響が出る障害です。特に、幼少期の虐待・ネグレクト(育児放棄)・家庭内暴力(DV)・長期間のストレス環境 などが原因となります。

発達性トラウマ障害は、**複雑性PTSD(C-PTSD)**と似ていますが、幼少期の発達段階でトラウマが起こるため、脳の発達や人格形成により深刻な影響を及ぼす点が特徴です。


1. 発達性トラウマ障害の特徴

発達性トラウマ障害(DTD)は、以下のような特徴があります。

✅ 1. 感情のコントロールが難しい

  • 些細なことで強い怒りを感じる
  • 急に泣き出す、パニックを起こす
  • 感情の起伏が激しく、自分でも抑えられない

✅ 2. 対人関係の問題

  • 人を信用できず、極端に警戒する(回避型)
  • 逆に、過剰に依存してしまう(依存型)
  • 「見捨てられる」ことへの強い恐怖を持つ

✅ 3. 自己否定が強い

  • 「自分は愛される価値がない」と思う
  • 罪悪感や恥の感覚が強い
  • 自己評価が極端に低い

✅ 4. 身体的な症状

  • 頭痛、腹痛、倦怠感、吐き気などの身体的ストレス反応
  • ストレスを感じると体がこわばる
  • 解離(Dissociation):ストレスを感じると意識がぼんやりする、記憶が抜け落ちる

✅ 5. 衝動的な行動や依存

  • 自傷行為(リストカットなど)や暴力
  • アルコール・薬物・過食・ギャンブルなどの依存
  • 極端なリスクを取る(危険な行動をする)

✅ 6. 学習・集中の困難

  • 注意力が散漫になりやすい(ADHDと誤診されることも)
  • 記憶力が悪く、学校や仕事で困る
  • ストレスがかかると「思考が停止」してしまう

2. 発達性トラウマ障害の原因

発達性トラウマ障害の主な原因は、幼少期の安全感が失われる経験です。

✅ 幼少期のトラウマ体験(例)

  • 親からの虐待(身体的・精神的・性的虐待)
  • ネグレクト(育児放棄)
  • 家庭内暴力(DV)を目撃する
  • 過酷な環境での成長(戦争、極度の貧困など)
  • 長期間のいじめ、ハラスメント
  • 頻繁に養育環境が変わる(里親・施設・親の離婚など)
  • 過干渉・極端な厳格さ(心理的虐待)

✅ 幼少期の脳への影響

脳は、幼少期に「安全な環境」の中で発達する必要があります。しかし、長期間のストレスやトラウマがあると、脳の発達そのものに影響を与えてしまうのです。

脳の部位役割発達性トラウマの影響
偏桃体(アミグダラ)恐怖・不安を感じる常に警戒モードになり、ストレスに過敏
前頭前野(PFC)判断力・感情の抑制感情をコントロールしにくい
海馬(ヒッポキャンパス)記憶の処理記憶障害、フラッシュバックが起こりやすい
脳幹(リザードブレイン)生存本能「戦う・逃げる・凍る(フリーズ)」の反応が過剰

特に、偏桃体が過剰に活性化し、前頭前野の発達が遅れることで、衝動的な行動をとりやすくなることが特徴です。


3. 発達性トラウマ障害の診断と誤診

発達性トラウマ障害は、まだ正式な精神疾患の診断名としては確立されていません(DSM-5には未収録)。そのため、以下のような疾患と間違えられることがあります。

✅ よくある誤診

誤診されやすい疾患違い
ADHD(注意欠如・多動症)DTDは「環境要因」で集中力が低下するが、ADHDは「生まれつきの脳機能の違い」によるもの
自閉スペクトラム症(ASD)DTDは「トラウマ」による対人関係の問題だが、ASDは「先天的な特性」
うつ病・不安障害DTDは「幼少期のトラウマ」が原因だが、うつ病は必ずしもトラウマが原因ではない

診断の際は、幼少期の環境やトラウマの有無を慎重に考慮することが重要です。


4. 発達性トラウマ障害の治療法

発達性トラウマ障害は、時間をかけた適切な治療で回復が可能です。

✅ 治療のポイント

  1. 安全な環境を確保する
    • まずは「自分が安全だ」と感じられる場所を作ることが最優先。
  2. トラウマ専門のセラピーを受ける
    • 認知行動療法(CBT):トラウマによる「歪んだ認知(思考パターン)」を修正する。
    • EMDR(眼球運動による脱感作・再処理法):フラッシュバックや記憶の処理を助ける。
    • スキーマ療法:幼少期の「生きづらさの原因」を探り、修正する。
  3. 自己肯定感を高める練習
    • 「自分は価値がある」と思えるように、日常生活で小さな成功体験を積み重ねる。
  4. マインドフルネスや瞑想
    • 過去のトラウマにとらわれすぎず、「今この瞬間」に意識を向ける訓練。
  5. 信頼できる人との関係を築く
    • **支援グループ(ピアサポート)**を活用するのも有効。

5. まとめ

発達性トラウマ障害(DTD)は、幼少期の繰り返されるトラウマによって脳の発達に影響が出る障害。
感情のコントロール、対人関係、自己否定感、学習能力などに問題が出やすい。
トラウマが脳の発達に影響を与え、特に偏桃体と前頭前野の機能低下が関連する。
治療には、安全な環境、認知行動療法、EMDR、自己肯定感を高める訓練が重要。

焦らず、自分を大切にしながら回復を目指すことが大切です。

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  • 1. 発達性トラウマ障害の特徴
    1. ✅ 1. 感情のコントロールが難しい
    2. ✅ 2. 対人関係の問題
    3. ✅ 3. 自己否定が強い
    4. ✅ 4. 身体的な症状
    5. ✅ 5. 衝動的な行動や依存
    6. ✅ 6. 学習・集中の困難
  • 2. 発達性トラウマ障害の原因
    1. ✅ 幼少期のトラウマ体験(例)
    2. ✅ 幼少期の脳への影響
  • 3. 発達性トラウマ障害の診断と誤診
    1. ✅ よくある誤診
  • 4. 発達性トラウマ障害の治療法
    1. ✅ 治療のポイント
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