社会には「悩む人 ↔️ 悩ませる人」が少なからずいます。いずれもが精神医療の対象になるのですが、自ら受診するのは「悩む人」で、「悩ませる人」は周囲や社会の圧力がない限り受診しないものです。両者は表裏一体で、時に悩み、時に悩ませることがありますが、大別すると下記となります(Schneider 1923)。Gruhle1918の「葛藤人格」の10類型を用いましょう。
悩む人
抑うつ型、自信欠乏型、意志欠如型、無力型
悩ませる人
発揚型、過信型、顕示型、気分変動型、爆発型、情性欠如型
1. 発揚型
快活で現実的、世話好きの楽天家。しかし周囲と摩擦を起こし、すぐ和解します。仕事・住所・交際者などが頻回に変わります。意志(意思)不安定。気分循環症。
2. 抑うつ型
絶えず重苦しい気分を抱き、人生を悩んでいます。外見は整え、清潔・清楚なこともあります。情にもろく臆しやすい型、不機嫌で気難しい型、猜疑心(被害念慮)を抱きやすい型など。気分変調症。
3. 自信欠乏型
小心で心身に自身なく、不全感を覚えます。倫理感から良心の呵責を抱き、絶えず反省し、自分に問題あるのではないかと悩みます。そして強迫観念を抱き、不合理な事柄にこだわります。他人の評価に敏感で、対人恐怖、被害関係妄想(周囲の出来事を自分に関係づけ被害妄想を生じる)を生ずることもあります。
4. 過信型
本人の考えまたは何らかの理念(信条、思想、宗教など)を信じ、他を顧みず、貫徹しようとする。非現実的な思想や宗教を信じ風かわりながらおとなしく生活している人格と(隠遁者)、権利や賠償を求めて激しく闘争する人格と(好訴者)に分かれます。最近の診断では自閉症圏に相当する例が多いです。
5. 顕示型
自分を実際以上に見せかける。嘘をついたり演技をしたりして、他人も自分も欺く(あざむく)。ただし金銭など経済的な利益を求めるのではなく、自分を演ずること自体を目的とします。空想虚言はこの人格を基底にします。
6. 気分変動型
わけもなくイライラしたりウツウツしたりします。急に気が変わり、外へ出て、買い物したり、話しかけたりするかと思うと、家に引きこもりじっとしています。嘘や盗み、酒や薬などの問題を起こすこともあります。いわゆる境界例(神経症と精神病の中間)に相当します。
7. 爆発型
些細なことで興奮し、激昂する人格。双極症または衝動抑制症。
8. 情性欠如型
同情、良心、後悔など抱かない冷徹・残酷な人格。罪を犯すことがあります。優秀な場合、パワハラ、独裁経営を行います。反社会性人格、最近よく用いられるサイコパス。
9. 意志欠如型
周囲に影響されやすく、自分の意志を持続できない人格。更生保護施設などへ入所すると、すぐ感化されますが、退所すると、行きずりの人に影響され、再び道を外します。精神遅滞の可能性があります。
10. 無力型
気力の低下を主徴とし、抑うつ気分・意欲低下などの抑うつ神経症、または現実感の喪失などの離人神経症を呈する人格。一方、体力の低下を主徴とし、心身症、心気症などを呈します。両者は併発することも多く、心身の違和感や不全感に悩み続けます。