ADHD(注意欠如・多動症)の生い立ち
ADHD(注意欠如・多動症)は、不注意・多動性・衝動性 を特徴とする発達障害です。幼少期からこれらの特徴が見られ、成長とともに変化することがあります。ADHDの発症には 遺伝的要因 と 環境的要因 が関係しています。
1. 遺伝的要因(生まれつきの脳の特性)
ADHDは、脳の発達や神経伝達の違い による生まれつきの特性と考えられています。
- 遺伝の影響が強い
- ADHDの発症リスクは 親や兄弟にADHDの傾向があると高まる。
- ADHDの子どもの約75%が遺伝的要因を持つとされる。
- 脳の構造・機能の違い
- 前頭前野の働きが弱い(計画・注意・衝動抑制をコントロールする部分)。
- ドーパミンやノルアドレナリンの不足(集中力やモチベーションを維持する神経伝達物質)。
- 脳の発達の遅れ(定型発達の子と比べて2〜3年遅いことがある)。
- 出生時の影響
- 低出生体重児(2500g以下)や早産児で生まれた場合、ADHDのリスクがやや高まる。
- 母親の妊娠中の喫煙やアルコール摂取も関与する可能性がある。
2. 環境的要因(育て方の影響は間接的)
ADHDは生まれつきの脳の特性であり、親の育て方が直接の原因ではない。
ただし、環境によってADHDの症状が悪化したり、改善したりすることがある。
- 幼少期のストレス
- ADHDの子どもは環境の変化に敏感で、ストレスがかかると症状が悪化する。
- 例:「親の離婚」「家庭内の不安定さ」「虐待」「厳しすぎるしつけ」など。
- 親の対応が影響することも
- 厳しすぎるルール:「集中できないのは怠けている」と責められると、自尊心が低くなる。
- 甘やかしすぎる育て方:「何をしても許される」と学ぶと、衝動性が強くなることがある。
- 学校の環境
- 教師の理解や支援が不足すると、「落ち着きがない」「指示が聞けない」と誤解されやすい。
- 過度なプレッシャーがある学校では、ADHDの子どもがストレスを感じやすい。
3. ADHDの子どもの生い立ちの特徴
① 幼少期の特徴(0〜6歳)
- じっとしていられない
- ベビーカーや椅子に長時間座っていられない。
- 周囲の音や刺激にすぐに反応する。
- 興味の移り変わりが激しい
- 1つの遊びに集中せず、すぐに他のものに気が移る。
- おもちゃを出したまま次々に違うものに興味を持つ。
- 危険を顧みずに行動する
- 急に道路に飛び出す、ベランダから身を乗り出すなど、危険な行動をとることがある。
- 「ダメ」と言われてもすぐに忘れる。
- 睡眠のリズムが崩れやすい
- 夜なかなか寝つけない、寝てもすぐに目が覚めることが多い。
② 幼児期・学童期(6〜12歳)の特徴
- 授業中に座っていられない
- 先生が話している間に立ち上がる、教室内を歩き回ることがある。
- 忘れ物が多い
- 宿題や筆箱を忘れる、持ち物をどこかに置きっぱなしにする。
- 話を最後まで聞けない
- 指示の途中で動き出してしまい、間違った行動をとることがある。
- 順番を待つのが苦手
- 友達と遊んでいるときにルールを無視したり、順番を守れなかったりする。
- 感情のコントロールが難しい
- すぐに怒る、泣く、興奮するなど、感情が爆発しやすい。
- 友達とのトラブルが増えやすい。
- 集中できることとできないことの差が激しい
- 興味があること(ゲーム、絵を描く、特定の遊び)には異常に集中できる。
- 興味がないこと(宿題、片付け)にはまったく集中できない。
③ 思春期・成人期(12歳〜)の特徴
- ルールを守るのが苦手
- 先生や親の指示を無視してしまうことがある。
- 遅刻や忘れ物が多く、成績が安定しにくい。
- 自己肯定感の低下
- 「なんでみんなと同じようにできないんだろう?」と悩むことが増える。
- 親や教師に叱られることが多く、「自分はダメな人間だ」と感じやすい。
- 衝動的な行動が続く
- お金を計画的に使えない、感情的に行動して後悔することがある。
- 過集中の影響
- 興味のあることには没頭しすぎて、生活リズムが崩れることがある(例:ゲームに熱中しすぎて寝不足になる)。
4. まとめ
✅ ADHDは生まれつきの脳の特性であり、育て方が原因ではない。
✅ 遺伝的要因が強く、親や兄弟にADHDの傾向があることが多い。
✅ 幼少期から「不注意」「多動」「衝動性」が見られ、環境の影響で症状の出方が変わる。
✅ 適切な支援があれば、強みを活かして社会で活躍することも可能。
ADHDの強みを活かすには?
ADHDの特性は、環境によっては「短所」ではなく「強み」になります。
- 創造力・発想力が豊か
- ルールにとらわれず、独創的なアイデアを生み出せる。
- 芸術・エンターテインメント・科学技術などの分野で活躍する人も多い。
- エネルギッシュで行動力がある
- 一度興味を持つと、ものすごい熱量で突き進める。
- 困難にもめげずに挑戦できる
- ADHDの人は失敗してもすぐに切り替えて再挑戦する力がある。
適切な環境とサポートがあれば、ADHDの特性を活かして成功することも十分可能です。