若い女性にとって美しさは絶対的な価値観と考えられがちで、美しくなるために多くの時間と労力、時には多額のお金を費やします。そして男性からはもちろんのこと、同性からも誉められたい、自分自身にも自信を持ちたいと思い努力します。一方、そのことで長い間、悩んでいる方も少なくありません。「もう少し目が大きかったら、顔が小さかったら・・・」と悩んだり、「胸を大きくしたい」「下半身を痩せたい」と願ったりしています。
筆者の大学時代からの友人、湘南美容外科 総院長 相川佳之先生 によると、皆さん密かに悩み続けているようで、手術を契機に生まれ変わったように人生が明るくなる方もいらっしゃるようです。最近は「プチ整形」と言い、化粧をするような感覚で、周囲に気づかれないくらいの簡単な手術で受けられる方も増えているようです。彼曰く「心療内科医や精神科医と同じように、僕らは美容整形外科手術を通して患者さんの『心』も治療している」とのことです。
美容整形手術の是非はともかく、若い女性における美しさへのこだわりはとても強く、時には常軌を逸することもあります。決して醜くなどないのに手術を求めたり、繰り返したりするのです。これはいわゆる「醜形恐怖」と言われ、自分の容姿容貌が醜いのではないかと恐れ続ける心の病気です。彼女たちに共通する精神病理として「ボディイメージの障害」があります。彼女たちは皆「否定的な自己像」を抱いており、常に「自分が醜い・太っているのではないか」「周りから受け入れられないのではないか」と恐れ悩んでいます。そして周囲の視線を過剰に気にして「対人恐怖」となり、自分の顔・形を変えることに執心しています。前回・前々回にお話した摂食障害と似たような心理です。原因としても同様に遺伝的・生物学的な素因もさることながら、幼少期からの両親・母親との愛情関係が影響するとも言われています。
更に醜形恐怖では妄想的になることが少なくなく、「口の中や腋の下も臭っている」と悩んだり、「周囲からジロジロ見られている・噂されている」と恐れたりすることもあります。いわゆる「自己臭妄想」「被害妄想」と言われる精神病の症状です。これらは特に自意識の高まる思春期・青年期に多く認められます。決して軽くない症状ですから、この場合は速やかに精神科的な治療を受けられることをお勧めします。いずれにしても自分の容姿容貌が気になって仕方ない時は、心療内科や精神科へも相談してみるのがよいでしょう。