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精神医学

賭博症の精神医学

1. 賭博症とは?

賭博症(ギャンブル障害, Gambling Disorder)は、衝動制御障害および行動嗜癖(行動依存症)の一種とされる精神疾患です。
DSM-5(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では、ギャンブル障害は「物質関連障害および嗜癖性障害(Substance-Related and Addictive Disorders)」に分類され、薬物依存症と類似の脳内メカニズムを持つことが指摘されています。

ギャンブル障害の特徴は、金銭的な利益よりもギャンブル行為そのものへの強迫的な執着や衝動制御の困難さです。その結果、個人の生活や社会的機能に深刻な悪影響を及ぼします。


2. DSM-5の診断基準

ギャンブル障害は、以下の症状のうち 5つ以上 が12か月以内に認められた場合に診断されます。

  1. より大きな賭け金が必要になる
    • 興奮を得るために、以前よりも高額の賭けを必要とする。
  2. ギャンブルを減らす・やめると落ち着かなくなる
    • 禁断症状のように、不安・イライラ・抑うつなどが現れる。
  3. ギャンブルをやめようと努力するが、うまくいかない
    • 何度も減らそう・やめようと試みるが失敗する。
  4. ギャンブルへの執着
    • 過去のギャンブルについて考えたり、次にどうやって賭けるかを計画する。
  5. 負けを取り戻そうとする(負けの追いかけ)
    • 損失を取り戻すために、さらにギャンブルを続けてしまう。
  6. ギャンブルをするために嘘をつく
    • 家族や友人、仕事関係者にギャンブルの頻度や損失額を隠す。
  7. 生活や仕事が犠牲になる
    • ギャンブルのせいで、家庭・仕事・学業・人間関係に重大な問題が生じる。
  8. 経済的に困窮し、他人に頼る
    • ギャンブルによる借金を抱え、家族や友人から金銭的な援助を求める。
  9. ストレスや気分の落ち込みを解消するためにギャンブルをする
    • 不安や抑うつ、ストレスを紛らわせるためにギャンブルを行う。

3. ギャンブル障害の脳科学的メカニズム

ギャンブル依存症は、単なる「意思の弱さ」ではなく、脳の報酬系や衝動制御に関わる神経回路の異常が関連しています。

(1) 報酬系の異常

  • ギャンブル行為は、側坐核(Nucleus Accumbens) を介して ドーパミン を放出し、快感をもたらす。
  • 薬物依存と同じように、ギャンブルも「報酬回路」を過剰に刺激 するため、脳が「ギャンブル=快楽」と学習してしまう。

(2) 前頭前野の機能低下

  • 前頭前野(Prefrontal Cortex) は衝動抑制や意思決定を担う領域だが、ギャンブル障害の人はこの機能が低下。
  • 結果として、「リスクのある賭けを止める能力が低下」し、負けが込んでいてもやめられなくなる。

(3) 認知の歪み

  • ギャンブル障害の人は、「勝つ可能性を過大評価」し、「負けを一時的なもの」と考える傾向 がある。
  • 例:「もうすぐ大当たりする」「次こそは勝てる」「負けを取り戻せる」

(4) セロトニン系の機能異常

  • セロトニン(5-HT)は衝動制御や気分調整に関与する。
  • ギャンブル障害では、セロトニン機能が低下し、抑制力が弱くなり、衝動的な賭けをしてしまう

4. ギャンブル障害の心理学的要因

(1) 強化学習(Operant Conditioning)

  • ギャンブルは 「変動比率スケジュール」(不規則な間隔で報酬が与えられる)に基づくため、依存しやすい。
  • これは「スロットマシン」「パチンコ」「競馬」などの不確実性の高いギャンブルで特に強く働く。

(2) 気分調整

  • うつ状態やストレス、不安を紛らわせるためにギャンブルをするケースが多い。

(3) 環境要因

  • 幼少期にギャンブル経験がある、家族にギャンブル依存がいる場合、発症リスクが高まる。

5. ギャンブル障害の治療法

(1) 認知行動療法(CBT)

  • 認知の歪み(ギャンブルへの誤った期待)を修正する
    • 「次は勝てる」という思考パターンを変える
  • トリガー(衝動を引き起こす要因)を特定し、回避する
    • 例えば、特定のストレスがギャンブル欲求を引き起こしている場合、それを別の方法で解消する。
  • 行動修正
    • 「ギャンブル以外の報酬」を見つける。

(2) 薬物療法

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
→ 衝動を抑制し、気分の安定を図る。

  • ムードスタビライザー(気分安定薬)
    → 双極性障害を合併している場合に有効なことがある。

(3) 自助グループ(GA: ギャンブラーズ・アノニマス)

  • 12ステッププログラムを活用し、ギャンブルを断つための支援を受ける。

(4) 環境調整

  • ギャンブルに関わる環境(カジノ、パチンコ店など)を避ける。
  • 金銭管理を家族に任せる。

6. まとめ

賭博症の特徴

  1. ギャンブル行動がコントロールできない
  2. 負けを取り戻そうとして、さらにギャンブルを続ける
  3. 衝動的で、長期的な損失を考慮できない
  4. ストレスや気分調整のためにギャンブルをする
  5. 脳の報酬系・前頭前野の機能異常が関与
  6. 治療には、認知行動療法・薬物療法・自助グループが有効

最終的なポイント

賭博症(ギャンブル障害)は、単なる「お金の問題」ではなく、脳の依存メカニズムと深く関わる精神疾患 です。
薬物依存と同様に、長期間の治療と支援が必要であり、本人だけでなく家族や社会全体の協力も重要 です。

「ギャンブルをやめたいのにやめられない」という悩みは、医学的・心理学的に治療可能であり、早期のアプローチが鍵となります。

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    4. (4) セロトニン系の機能異常
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    1. (1) 強化学習(Operant Conditioning)
    2. (2) 気分調整
    3. (3) 環境要因
  • 5. ギャンブル障害の治療法
    1. (1) 認知行動療法(CBT)
    2. (2) 薬物療法
    3. (3) 自助グループ(GA: ギャンブラーズ・アノニマス)
    4. (4) 環境調整
  • 6. まとめ
    1. 賭博症の特徴
  • 最終的なポイント
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