前記は男性の自閉症と性依存を記載しました。自閉症は男女比4:1のため、男性に多く、自閉症の病態生理が「超男性脳」とも言われているため、とかく男性の病理が目立ちます。しかし女性の罹患者も少なからずいらっしゃり、独特の病態を呈されます。特に、これまで独立されていた疾患が、自閉症の二次疾患と考えられるようになりました。当院は銀座という立地ゆえ、自閉症の女性患者さんも多いため、その特徴をご紹介しましょう。
まず「摂食症・制限型」が挙げられます。この疾患は「痩せ願望」の著しいタイプで、体重<40kg、重症になると体重<30kgになることもあります。自閉症の特徴である「自閉・固執」が認められ、特に「固執」が「痩せ願望」や「ボディイメージの障害」と相まって重症化します。また、幼少期に肥満だったり、イジメ被害に遭ったり、母子の助著関係が円満でなかったりすることから、「発達性トラウマ性障害」を形成します。
次に「醜形恐怖症」が挙げられます。前者は中学生頃に発症するのに対し、後者は高校生頃に発症します。「自己同一性・形成後期」、他者からの視線を過剰に気にしつつ、自己不全葛藤に悩むことから発症します。他者の視線を気にするのみならば対人不安に留まるのですが、自己不全にこだわるところが「自閉・固執」です。このレベル方は何の異常もないのに繰り返し美容整形手術を受けるため、美容形成外科医の方も困ってしまい、精神科医へ紹介されます。なお、こだわる部位は体毛>鼻>目の順番です。
かつて、日本の精神医学の祖;笠原嘉先生は「思春期妄想症」を提唱しました。思春期から青年期にかけ、上記のような醜形恐怖・妄想を呈したり、自分の口臭や体臭を過剰に気にする自己臭恐怖・妄想を呈したり、他人の視線や言葉を過剰に気にしたりする敏感関係妄想などが挙げられます。
同じく精神病理学の大家;濱田秀伯先生は「無力妄想」を提唱しました。やはり思春期・青年期に自我障害を示し、何かが失われ、自分が低下したという無力感・自責感と、未来が閉ざされ生きていくのが困難である束縛感を覚えます。さらに予期不安、見捨てられ不安、空虚感、虚無感など多彩な精神症状を呈します。かつての「境界例」を彷彿させる概念ですが、現代ならば自閉症の二次障害とも言えるかもしれません。