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精神医学

統合失調症の幻覚妄想など

妄想の大半は「関係妄想」であり、はじめ半信半疑であったものが、しだいに確信となります。
主題は「微小妄想」にはじまり、「被害妄想」をへて、「誇大妄想」へ至ります(後述)。

いくつもの体験が一つに整理され、「自分の周囲に起きていたことはこういうことだったのか」と本人のこころの中で創造されることを「妄想体系」といいます。長い年月を経ると、まとまりを欠いた、荒唐無稽の内容になります・・・

ドイツの精神科医 Corad は、たび重なる病状増悪 Schub における妄想を「こころが狭くなり、自分の周りで何か分からないことが起こるような気がして(妄想気分)、自分が世界から一方的に受動的となり(妄想知覚)、その後、反対に世界へ影響を与える能動的な逆回転を経て、最後に
暗示を含み全容が明らかとなる『妄想体系』に至る」と考えました。

幻覚 Hallucination

“alucinatio”夢の中をさまよう “αλνω”さまよう

感覚器が刺激されていないのに「知覚」を生ずる病的体験
「知覚すべき対象知覚」Ey. H. 1973

 感覚性・客観性・実体性・外部性

「要素幻覚」;光・音など、感覚要素の幻覚
「有形幻覚」;声・姿など、複雑な内容を伴う幻覚

「仮性幻覚」;外部でなく、内部の主観的空間に浮かぶ
       統合失調症に多い

幻視:意識障害やレビー小体型認知症など「外因性・身体因性」の精神障害。

幻聴:統合失調症(内因性・機能性、精神障害)に多く、
   自分の考えが声になり聴こえることを「考想化声」といいます。

幻味幻臭:不快な内容が多く「被害妄想」を伴いやすい。
      幻臭の一種として「自己臭恐怖」あり、思春期に生じやすい。

幻触:身体表面の幻覚。
   「体感幻覚cenestopathi」とは、奇妙で異常な幻覚を執拗に訴える幻覚。
   「脳がドロドロに崩れている」「腸がグルグルねじれている」など

錯覚 Illusion
対象を誤り「知覚」すること、軽い意識障害、不注意など。
知覚変容 Sensory Distortion
外界をいつもと異なり感じられる主観的体験、離人症にて「景色がモノトーンに見えたり」、
統合失調症にて「目に入るものがギラギラした原色に映る」「音が耳に突き刺さる」など。
統合失調症初期、高機能自閉症にて「自分が変わってしまった」など妄想気分に近い。

既視感 deja vu
初めて見る光景を、既に見たことがあるように感じること。
未視感 jamais vu
よく見て知っている光景を初めてのように感じること。
統合失調症、離人症など。

夏目漱石「道草」(1915)
「おまえは何をしにて世の中へ生まれてきたのだ」彼の頭のどこかでそういう質問を彼にかけるものがあった。彼はそれに答えたくなかった。なるべく返事を避けようとした。するとその声がなお彼を追及しはじめた。何べんでも同じことを繰り返して止めなかった。彼は最後に叫んだ。「わからない」その声はたちまちせせら笑った。「わからないのじゃあるまい。わかっていても、そこへ行けないのだろう。途中でひっかかっているのだろう」「おれのせいじゃない、おれのせいじゃない」健三は逃げるようにずんずん歩いた。

統合失調症は、本人が能動性を失い、他者から圧倒される体験を持つため、「見る」という「能動的」な幻視より「話しかけられる」という「受動的」な幻聴が多いのでしょう。

統合失調症の幻聴は、自問自答が次第に感覚性、次ぎ他者性を帯び、「他人からの問いかけと、本人による応答」へ進展します。

ジャンヌ ダルク Jeanne dArc (1412-1413)
ドンレミの村民からは、おとなしく素直で信心深い娘と言われていました。13歳頃、行いを正すため教会へ通うようにという「声」を聴きました。「声」は真夏の正午、教会の方より聴こえ、同じ方より沢山の光も見えました。威厳のある声で初めは恐ろしく感じましたが、繰り返し聴くうち、天使聖ミッシェルだと分かりました。声は明瞭なフランス語で「イルドフランスへ行かなけばならない」という命令と「オルレアンを解放するだろう」という予告とが合わさり、「自分は貧しい娘で、馬に乗ることも、戦い方も知らない」と反論を行う対話にもなりました。17歳時、「声」に導かれ、村を出て、ヴォークルールの守備隊長ロベールと会い、戦いに参加しました。声には二人の聖女カトリーヌとマルグリットも加わり、「乙女ジャンヌ、神の娘」と話しかけ、頭に冠を飾った姿も見えました。彼女はこれらの声に励まされ、自分が神から遣わされたと歓喜とどもに確信、時には自ら声の指示を求め、命令を忠実に実行しました。

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