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精神医学

統合失調症の妄想

妄想の大半は「関係妄想」であり、はじめ半信半疑であったものが、しだいに確信となります。
主題は「微小妄想」にはじまり、「被害妄想」をへて、「誇大妄想」へ至ります(後述)。

いくつもの体験が一つに整理され、「自分の周囲に起きていたことはこういうことだったのか」と本人のこころの中で創造されることを「妄想体系」といいます。長い年月を経ると、まとまりを欠いた、荒唐無稽の内容になります・・・

ドイツの精神科医 Corad は、たび重なる病状増悪 Schub における妄想を「こころが狭くなり、自分の周りで何か分からないことが起こるような気がして(妄想気分)、自分が世界から一方的に受動的となり(妄想知覚)、その後、反対に世界へ影響を与える能動的な逆回転を経て、最後に暗示を含み全容が明らかとなる『妄想体系』に至る」と考えました。

Sullivan, HS. 「現代精神医学の概念」(1940)

医学部へ入る前から、私の興味は統合失調症に限られていた・・・

これは一次的に人間の生の障害であり、器質的な障害ではない。対人的な場という因子により、統合失調症となる・・・

1925年頃、私は統合失調症に関する既存の命題は全て誤っているとの確信を持った。すなわち、統合失調症には従来より指摘されてきた破壊的な側面のみではなく、生命・保存的な側面もあるのではないか。それは解離した人生体験を寄せ集め、再統合を成し遂げるための手段として、発生段階的に古い思考過程に退行しようとする試みなのである・・・

現在・過去・未来を妄想的に歪曲加工することは、患者さんにとり願ってもいない救いである。信じては疑い、証明したかと思うと反証の出てくるこころを迷わせ、疲れさせる流れとは打って変わり、妄想は堅固で頼りになる。患者さんの安全保障という点で良好である。

しかし妄想が潜在的に持っている悪性の可能性はこの点にある。この一時的な安全保障の代償として「永遠に成就しない愛」は消え、それに代わり憎しみが後を継ぐ。こうして患者さんの人格は徐々に解体するのである。

保崎秀夫「統合失調症におかる被害妄想について-特に誇大妄想との関係において」

生体は侵襲を受け、神経衰弱状態を経て、意識あるいは感情の変化を来たし、異常な震撼状態となり、これに対し生体は不安を中心とした反応を呈する・・・

かのような震撼状態における生体は直ちに再統合の努力をする・・・

このような再統合の努力が被害妄想を作るのではないか。すなわち震撼状態で、おのれを見失い、不安となった生体は、漠然とした状態から自分を取り戻す努力、自分を他よりはっきりと区別する努力、すなわち自他の対立関係(敵対関係)をはっきりさせることにより、おのれを見出すという努力、すなわち被害妄想を作っていくんではあるまいか。この状況は裏を返すと、内閉的ともいえよう・・・

被害妄想を持つことにより、おのれを見出す努力をしていた生体が、段々と力を失いつつ経過して、より低い段階に堕ちてゆく際、自己を見出す方法として、示されるのが誇大妄想であると考えられないだろうか。すなわち、より低い段階では、自己を他より区別する方法として、誇大妄想(背伸びするとも言えよう)の形を示すのではないだろうか・・・

そのことにより生体が安定・安住を得るのではないかと考える。

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