🧠 脳科学的に見る「片づけ」とは?
片づけは単なる手作業ではなく、「計画して、優先順位をつけ、集中して、ものを分類し、不要なものを捨てる」という一連の高度な実行機能(executive function)に支えられたプロセスです。
🌐 関与する主な脳領域
1. 前頭前野(PFC)
- 実行機能の中枢。
- 計画立て、判断、行動の制御に関与。
- 前頭前野の働きが弱いと、「どこから手をつけていいかわからない」「途中で気が散る」などが起こりやすい。
2. 帯状回(ACC:前部帯状皮質)
- エラーの検出や注意の切り替えに関与。
- たとえば、「あっ、これじゃだめだ」「こっちを先にやろう」と気づく能力。
3. 扁桃体(感情の中枢)
- 捨てる・選ぶという行為には感情が強く絡む。
- たとえば「もったいない」「思い出があるから手放せない」などの情動的反応を引き起こす。
4. 海馬(記憶)
- 過去の記憶と関連づけて物の価値を判断する。
- 「昔これをもらった」「この服には思い出が…」など。
🧩 脳科学的に見た「片づけられない人」の特性
◆ ADHDタイプの脳
- 前頭前野の活動が弱め → 実行機能が不安定。
- ドーパミン不足により、モチベーションが維持しにくい。
- 片づけのような「報酬が遅い作業」が苦手。
◆ 感情優位型(過去に執着しやすい)
- 扁桃体が過敏 → 感情のブレーキがききづらい。
- 「捨てる」ことが痛みとして感じられる(損失回避バイアス)。
◆ マルチタスク脳の崩壊
- 情報社会で常に注意が分散しており、集中が持続しない。
- 注意ネットワーク(前頭葉+頭頂葉)の過活動・疲労。
🔁 脳科学的アプローチ:どうすれば改善できる?
1. 「行動を分割」して脳の負担を減らす
- 「一気に片づける」は前頭前野にとって負荷が高すぎる。
- 5分だけ、1か所だけ、などタスクを小さく分けることで取り組みやすくなる。
2. 視覚刺激を減らす
- 目から入る情報が多いと、注意の処理が分散する。
- まず「見えないようにする」(ボックスに入れる、布をかける)だけでも効果的。
3. 報酬系を刺激する
- 脳のドーパミン報酬系(側坐核など)を使うため、「片づけたら○○していい」とご褒美ルールを使う。
- 「ビフォーアフターを写真で記録」なども自己報酬として有効。
4. 「捨てる」感覚ではなく「選ぶ」感覚にシフト
- 脳は「損失」よりも「獲得」に反応しやすい。
- 「何を手放すか」ではなく「何を残すか」を問うほうが、前向きな意思決定がしやすい。
💡 最後に:片づけは「脳を鍛えるトレーニング」でもある
片づけは、単に家をきれいにする作業ではなく、
脳の実行機能・感情調整・注意力・記憶力の統合的トレーニングとも言えます。
少しずつ習慣化することで、脳のネットワークそのものを鍛えることができるんです。