気分循環症(Cyclothymic Disorder)とは?
気分循環症(きぶんじゅんかんしょう、Cyclothymic Disorder)は、軽度の躁状態(軽躁状態)と軽度の抑うつ状態が周期的に繰り返される気分障害です。双極性障害(特に双極Ⅱ型障害)の軽症版とも言えますが、症状はより軽く、不安定な気分が長期間続くのが特徴です。
🧠 主な症状
1. 軽躁状態(Hypomanic Symptoms)
- 気分が高揚し、エネルギーが増加する
- 活動的になり、アイデアが次々と浮かぶ
- 話が多くなり、早口になる
- 睡眠時間が短くても平気
- 自信過剰や楽観的な考え
- 衝動的な行動(無計画な買い物や対人関係のトラブル)
2. 軽度の抑うつ状態(Mild Depressive Symptoms)
- 気分が落ち込み、無気力になる
- 物事への興味や喜びを失う
- 集中力の低下、決断困難
- 自己否定感や罪悪感
- 睡眠障害(不眠または過眠)
💡 診断基準(DSM-5)
- 少なくとも2年間(小児・思春期では1年間)、軽躁症状と軽度の抑うつ症状が繰り返し現れる。
- その2年間の間に、症状がない期間が2か月以上続くことはない。
- 大うつ病エピソード、躁病エピソード、または混合エピソードは発生していない。
- 症状は日常生活に影響を与えるが、双極性障害の診断基準には達しない。
⚙️ 原因
- 遺伝的要因:双極性障害や気分障害の家族歴がある場合、発症リスクが高い
- 脳の神経伝達物質の異常(セロトニン、ドーパミンなど)
- ホルモンバランスの乱れ
- ストレスやトラウマ(家庭環境や社会的ストレス)
💊 治療法
1. 薬物療法(気分の安定が重要)
- 気分安定薬(リチウム、バルプロ酸など):感情の波を抑える
- 抗精神病薬(アリピプラゾール、オランザピンなど):軽躁症状を抑制
- 抗うつ薬(必要な場合のみ):抑うつ症状を和らげるが、単独使用は軽躁症状を悪化させる可能性があるため注意が必要
2. 精神療法(心理療法)
- 認知行動療法(CBT):気分の波に対処するスキルを学ぶ
- 対人関係療法(IPT):人間関係のストレスを軽減する
- マインドフルネス療法:感情の波を冷静に受け止める練習
3. 生活習慣の改善
- 規則正しい生活リズム(睡眠、運動、食事の管理)
- アルコールやカフェインの過剰摂取を避ける
- ストレスマネジメント(リラクゼーションや趣味の時間を大切にする)
⚖️ 気分循環症と他の気分障害の違い
特徴 | 気分循環症(Cyclothymic Disorder) | 双極Ⅰ型障害(Bipolar I) | 双極Ⅱ型障害(Bipolar II) |
---|---|---|---|
気分の波の強さ | 軽躁と軽度の抑うつ | 躁状態(重度)と抑うつ | 軽躁状態と大うつ病エピソード |
期間 | 2年以上続く軽度な気分の波 | 1回以上の躁病エピソード | 1回以上の軽躁と抑うつエピソード |
日常生活への影響 | 比較的軽度だが慢性的 | 大きな支障を与える | 抑うつ期が重く影響大 |
発症年齢 | 思春期から成人期にかけて多い | 20代前後が多い | 20代から30代が多い |
🌿 まとめ
- 気分循環症は「軽い双極性障害」とも呼ばれますが、放置すると双極性障害に進展する可能性があります。
- 日常生活に大きな影響を与えるため、早期の治療と自己管理が重要です。
- 生活リズムの管理と、気分の波に対する理解が回復の鍵となります。