「恋愛の脳科学」は、恋愛感情や恋愛行動が脳内でどのように生ずるか、神経科学的な研究します。恋愛は、非常に強力で複雑な感情で、脳内の様々な部位や物質が関与しています。恋愛に伴う感情、行動、心理状態は、脳内の特定の領域や化学物質によって強く影響を受けます。
恋愛と化学物質
ドーパミン
「報酬系」の神経伝達物質で、恋愛初期に分泌されます。恋愛により生ずる「幸福感」や「高揚感」はドーパミンによります。恋愛が男女を興奮させる理由です。
セロトニン
気分の安定に関与する神経伝達物質です。恋愛初期はセロトニンが低下し、強迫観念や集中力低下を招きます。恋愛に没頭すること、相手のことを常に考えることは、セロトニンの低下が一因です。「恋愛依存症」の病因です。
オキシトシン
「愛情ホルモン」「抱擁ホルモン」といい、親密な関係や、絆を深める役割を果たします。オキシトシンは、抱擁やスキンシップ、さらに性的関係の際に大量分泌され、恋愛関係を強化する上でとても重要です。
バソプレシン
オキシトシンとともに、絆に関連するホルモンです。特に男性においてパートナーとの長期的な結びつきを強化する作用があるとされています。
エストロゲンとテストステロン
エストロゲン(女性ホルモン)とテストステロン(男性ホルモン)は、恋愛行動や性的欲求に影響を与えるホルモンです。恋愛に伴う性的な魅力を高めます。
恋愛に関連する脳領域
腹側被蓋野
ドーパミンを生成する報酬系の中心的役割を果たす脳領域です。恋人と一緒にいる時に感じる「高揚感」や「幸福感」を促進します。
側坐核
報酬や快楽を処理する脳の領域で、腹側被蓋野からのドーパミンを受け取ります。恋愛の「幸福感」は側坐核の活動と関連しています。
前頭前皮質
計画立案・意思決定・社会行動に関与する領域です。恋愛の初期段階は、前頭前皮質の活動が抑制されます。これは恋愛中の非合理的な行動や衝動的な判断につながります。「恋は盲目」になるのです。
扁桃体
感情に重要な役割を果たしますが、恋愛の初期段階はその活動が抑制されます。このため、恐怖や不安が軽減され、リスクを取る可能性があります。
恋愛の段階と脳科学
恋愛にはいくつかの段階あり、それぞれの段階で異なる脳の反応や化学物質の変動が認められます。
魅了段階
初期段階は、外見や行動、声などに引きつけられる「魅了」が生じます。この段階は、ドーパミンとテストステロンのレベルが高く、強い性的欲求や興奮を覚えます。
恋愛段階
魅了から発展し、相手に対する深い愛情や絆を感じるようになります。この段階では、オキシトシンとバソプレシンが重要な役割を果たし、長期的なパートナーシップが形成されます。
長期的な愛情段階
恋愛が安定し、深い愛情と信頼が育まれます。この段階では、オキシトシンとエンドルフィン(幸福ホルモン)が分泌され、安定感や幸福感が得られます。
恋愛の脳科学と人間関係
恋愛がどのようにして私たちの感情・判断・行動に影響を与えるか理解する上で非常に重要です。恋愛は強力な化学反応を引き起こします。そして、人間関係において非常に強力な影響を持ち、時に非合理的な行動も起こします。
恋愛の脳科学を理解することにより、自分と相手との感情や行動を客観的にとらえ、安定した関係を継続する「鍵」が得られることでしょう。