精神科・神経科・心療科
精神科;1902年、神経学会、東京帝国大学、精神科・呉秀三、内科・三浦謹之助
神経科;1953-60年、精神神経学会→精神医学会&神経医学会、神経医学の独立/発展
心療科;1963年、心身症を対象に、精神身体医学・心療内科を創設、池見酉次郎・九州大学
1990年以降、世界的に、脳科学・情報科学などの急速な発展、中枢神経=脳・脊髄神経、
「脳」→「こころ」の機能、という概念のもと、臨床研究が進行中
「精神科」の診療
「病歴」を繰り返し聴取・確認、「正常・異常」、「健康・病気」を鑑別、健康を目指します
「病歴」=「主訴」「現症」「家族歴(遺伝素因)」「生育歴・生活歴」「現病歴」ほか
基本的に身体の診察は行わず、傾聴・共感・受容に努めます、いわゆるカウンセリングCounseling
患者・本人Clientが語りつつ、自己発見することが理想です
やむを得ず「直面化」診療・診断の内容を直接、伝えても、「告知」の功罪を念頭に置くこと
治療関係は受容的、必要・最小限に止め、薬剤も必要に応じ、作用>副作用とします
このような積み重ねから信頼関係は向上し、その後も常に構築・維持に努めます
「自然治癒力、Resiliency」を信じます
精神医療の「実際」
勤務医・開業医、雇用者・被雇用者、性別・年齢・経験など、様々な要因により異なります
原則的に電話・メールなど用いない、診察室の接触に止める、カルテの必要性、文書を優先
個人情報保護、本人同意・署名捺印、証拠保全、文書・録音などまで…
雇用・解雇に関わる際、労働基準法を念頭に行います
例外;自傷他害の可能性、その際も記録の保全が求められます
職場復帰の流れ
- 休職中のケア
- 主治医の判断
- 産業医・人事部の判断
- 職場復帰
- フォローアップ
病状・遂行機能の回復、再燃の予防、内省・洞察
本人もさることながら、職場・雇用などに差異あり
本人の希望≠主治医の判断
主治医の判断≠産業医の判断
職場で求められる遂行機能に差異あり
双極症と経過
「気分高揚」と「意欲増進」を主徴とする観念奔逸、刺激性、抑制欠如、逸脱行為など
「爽快」という「躁」は少なく「鬱」との「混合状態」や「易怒性・易刺激性」が多いです
少なくとも1週間以上継続、入院を要する場合も少なくなくありません
「軽躁」とは軽い躁、うつ病の病初期・回復期にも生じます、4日以内、入院を要しません
日本の休日に偶然と合っています。
「初七日」「四十九日」「百ヶ日」「一周忌」と覚えましょう。「亡くなった人への悲しみ」と(喪の仕事)、「その代わりに生きるのだ」という、二つの「作業」の疲れを癒すため人々が集う習慣なのでしょう・・・
「次の休みまで働こう」という心がけは「病気」に限りませんね♨
睡眠・気分・活動・生活記録表など(個別)
家系図・自分史(家族歴・生活歴・現病歴)
自分取扱説明書(再燃・再発・予防計画書)
復職準備性を満たしているかどうか(後記)
Genogram 心理・社会的・家系図
援助者が、利用者を中心とした家族関係を理解するために作成する図のこと
Ecomap; さらに利用者が活用可能な社会資源や専門機関などを加えたもの
対象者の記号は二重線とする
同居者・複数名を線で囲う
男性は□、女性は〇、性別不明は△で記す
年齢は記号の中に記したり、下に記したりする
死亡は、記号を塗りつぶす、またはバツ印をつける
妊娠女性は、三角形を書き込む
夫と妻の記号を横線でつなぐ(結婚)
子どもは実線で下げ、先端に記号をつける
兄弟・姉妹は、横並びにつなげる
離婚は、横線の上から斜線で記す
離婚を、二重の斜線、別居を、一重の斜線もある
- 現在の問題からはじめる
問題はいつからはじまったのか?
誰が問題としているのか?
皆はどのようにとらえているのか?
問題が生じる前はどうだったのか? - 家族のことをたずねる
同居者(名前・年齢・性別、関係)?
以前に同じ問題が生じたか?
以前はどのように対処したのか?
最近の家族の変化・ストレスは? - 両親の実家について
両親の結婚(別居、離婚、再婚など)?
両親の同胞について? - 他の世代について
祖父母について?
- 喪失について
死別や離別など? - Gender について
「男女」の役割、家計、家事・育児?
親世代の「男女」の役割?
「家父長制」について? - Life Event について
結婚、妊娠・出産、引越、単身赴任、転職・退職など?
これらに、どのように対処したのか?
- 家族関係について
疎外関係(Cut Off)?
同盟関係(Alliance)?
夫婦・親子関係の特徴?
世代を越え、伝達されたか? - 家族内の「役割」
「患者」「看護者」?
「善人」「悪人」/「成功者」「失敗者」? - 個人の「機能」
学歴・職歴、病歴?
思い出など
抑うつ状態
抑うつ症、双極症、統合失調症、神経発達症など様々な疾患を背景にした横断的・状態(State)
縦断的・特性(Traite)、家族歴・生活歴を必要十分に聴取、本人・家族ほか、関係者から聴取
生物学的・指標;Biological Markerは十分、立証されていません
血液・画像検査などは補助手段であり、最も重要な情報は本人・家族ほか、関係者からの聴取
抑うつ状態→抗うつ薬と短絡的な診断・処方を避けましょう
抑うつ症;定型・非定型、双極症の前兆、特に10-20-30代の若年発症
双極症→気分安定薬、統合失調症→抗精神病薬、神経発達症→?
処方薬は必要最小限「自然治癒力」を高めましょう♨
うつ状態の臨床分類;笠原嘉、木村敏(1975、改変)
類型 | 病前性格 | 年齢 | 発病状況 | 病像・経過 |
Ⅰ型 | メランコリー親和型 | 中年、初老 | 状況変化 | 典型的、予後良好 |
Ⅱ型 | 循環型(躁うつ病) | 若年、初発 | 生物学的 | 良好だが、反復する |
Ⅲ型 | 葛藤反応型(未熟性格) | 若年、中年 | 葛藤状況 | 依存・他責、慢性化 |
Ⅳ型 | 偽循環型(統合失調症) | 青年・後期 | 出立危機 | 統合失調症 |
Ⅴ型 | 悲哀反応 | なし | 悲哀体験 | 一過性 |
Ⅵ型 | その他(器質性、症候性、医原性) |
健全な生活習慣
睡眠・運動・活動、節酒・摂食、禁煙
睡眠7時間/就寝-起床8時間
運動強度;3METs/日以上→23METs/週以上を推奨
例;歩行1日60分以上(1日約8,000歩以上)
座位の時間が長くなり過ぎないよう
# METs = Metabolic Equivalents
1METs ≒ 安静 3METs ≒ 歩行 6METs ≒ 走行
消費Calorie=METs×時間×体重(kg)×1.05
「物質依存」とは、依存物質を心身に重大な障害を引き起こすほど使用、物質・依存・耐性・離脱など問題を生じている精神疾患。物質は「違法薬物」のみでなく、「アルコール・タバコ」さらに「カフェイン・炭水化物」などの飲食物、さらに昨今は「医薬品(特に向精神薬・市販薬など)」も含まれています
Alcohol Dependence アルコール依存症
未治療率:約80%(WHO)、日本国内・啓発活動ほとんどなし、酒税と利益相反?、 2021年酒課税見込1兆1300億円(国税庁)2011年Alcoholによる社会的損失4兆1483億円(厚労省)
習慣飲酒→酒量増加→依存耐性→“Black Out”(飲酒前後の健忘)→高脂血症・肝機能障害
→肝硬変→食道静脈瘤の破裂/または肝臓癌・膵臓癌の発病/アルコール性精神病・認知症…
“Black Out”の時点で少なくとも「断酒」すべきですが、たいてい「否認」されます
「原因はAlcoholまたはAlcoholの飲み方であり、自分自身ではない」という「回避」によるのでしょう
自分の健康は自己責任かもしれませんが、仕事・家庭・他者を巻き込むため、中長期的に観察すると 「底を突く」か「酒を止める」かの二者択一となります
自律神経の医科学
外部・内部環境のストレス
→視床下部による生体制御
→神経制御系のストレス反応(自律神経、モノアミン、感覚閾値、運動など)
液性制御系のストレス反応(内分泌、免疫、髄液など)
細胞シグナル伝達制御系のストレス反応
→恒常性(ホメオスタシス)の維持
「寛解 remission」とは、症状が継続的に軽減、消失した状態です。「治癒」に近い状態ですが、精神神経疾患には慢性疾患が多く、症状消失後も予防的服薬や経過観察を行う必要があるため、「治癒」と言わず「寛解」と呼びます。
「うつ病」「躁うつ病」では「2週から8週間・無症状であること、または診断基準を満たさず、わずかな症状しかないこと」、「回復 recovery」は「寛解が8週間以上続くこと」と提案されています。
「統合失調症」では「幻覚・妄想、異常思考、思考解体、衒奇症・不自然な姿勢、感情鈍麻、引きこもり、自発性欠如が軽症に維持され、少なくとも6カ月以上入院歴のないこと」。
「社会機能(家事・学業・就業)」や「幸福感」も含め、より包括的な「社会的寛解」を目指し、機能的転帰を含めた「回復 recovery」という概念をもちいることがあります。いずれにおきましても、疾患と「上手く、付き合い」ながら「幸福な人生」を送ることを目標としましょう。