「強迫」とは、無意味な内部の精神活動に支配されること、思考・欲動など自我の統制可能な範囲に限られ、この意味で「させられ体験」領域に重なります。思考の「能動性意識」が保たれている点で、「自生思考」や「精神自動症」と異なり、「内容の不合理さ」への批判を持つことで「妄想」と区別され、さらに人格と調和せず、苦痛を伴う点で「支配観念」とも分けられます。
「支配観念(優格観念)」とは、強い感情に結びつき、意識内に長期間とどまり、占有し続けます。「固着(固定)観念」ともいい、肉親を失いいつまでも忘れられないような正常心理も含みます。
原因は十分に解明されていませんが、脳の中の「セロトニン」という神経伝達物質が不足しているために起こると考えられています。多少の遺伝性も指摘されています。うつ病や不安障害などと近縁の疾患で、合併することも少なくありません。重症の場合は勉強や仕事、日常生活も障害されてしまいます。
現在の治療の主流は薬物療法と精神療法「認知行動療法」です。薬物は「 SSRI 」と呼ばれる、セロトニンの伝達を改善させる薬がよく効くと考えられています。但し、比較的、高用量を要します。
認知行動療法とは、自動的に起こる思考(認知)や行動を、意識して修正する治療法です。治療者と一緒に、もしくは自分自身で認知や行動を客観的に観察・記録します。そして、強迫観念・行為を生じる認知・行動を修正するのです。
認知が修正され、ある程度の不安や恐怖が治まったら、意図的に強迫観念・行為を行わせないこともあります(曝露療法)。不安や恐怖心を感じながらも、それに耐えられるように訓練していきます。それにはご家族の協力も必要です。
ご家族は本人の病気をよく理解していただき、強迫症状を抑えられるよう協力をお願いします。ただし本人の意に反して無理に抑えると、逆効果になることありますのでご注意ください。本人の治療意欲を尊重しつつ、ご一緒に強迫観念や強迫行為を修正していかれると良いでしょう。治療は比較的、長期間かかりますが、良くなりますから、主治医によく相談しながら継続して下さいませ。
ジャック・ニコルソンとヘレン・ハントが、年輪を重ねた者同士の「人生の綾」を体現し、ゴールデングローブ並びにアカデミー賞の主演男優賞と主演女優賞をあわせて獲得したヒューマンコメディ。 ニコルソン演じるのは、恋愛小説で名を馳せた作家、だが素顔は病的なまでに潔癖症で、自己中心的な偏屈男だ。この憎まれ役が、ぜん息もちの息子と暮らすシングルマザー、ハント扮するなじみのウエイトレスとの恋を通じて、人間性を回復してゆく。隣りに住むゲイの画家(グレッグ・キニア)と愛犬との交流も重要で、3人(+1匹)のセッションが豊かなハーモニーを作りだしている。当時60歳のニコルソンから男の色気とナイーブさを引きだしたのは、『愛と追憶の日々』で彼にオスカー助演男優賞(自らに監督賞)をもたらした名匠、ジェイムズ・L.ブルックスだ。(轟夕起夫)