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精神医学

加害者臨床における内観療法の効果と限界

加害者臨床における内観療法の効果と限界
茅野分 真栄城輝明

緒言
加害者臨床に内観療法が効果的であることは、吉本伊信が少年院や刑務所で受刑者らの矯正に援用し、めざましい効果を認めたことから異論はないだろう。最近はCost(時間・費用・労力)から認知行動療法が主流になっていることは寂しいが、内観療法が否定されたわけではない。ただし、内観療法に限らず、心理社会療法が万能であると言えない。効果と限界、TPO. Time, Place, Occasionなどを考慮すべきことは、あらゆる治療法に必要である。


症例1
36歳、女性、窃盗癖、事務職

幼少期より母から2歳年上の姉と比較され、劣等感を覚え育った。短大卒後、事務職として真面目に就労した。28歳時、職場上司36歳と結婚。不妊治療を行うも子どもに恵まれなかった。姉夫婦には子ども二人が生まれ、引け目を覚え続けた。

33歳時より窃盗癖、逮捕2回。夫の勧めもあり、集中内観。母からの愛情を再確認、姉への劣等感は和らぎ、窃盗癖も治まった。

TEA. Trajectory Equifinality Approach
複線径路 等至性 アプローチ
症例;窃盗癖

症例2
42歳、男性、DV、SE

父方伯父が統合失調症、父は大学教授、母は高校教師、妹一人、幼少期より長男として厳しく育てられた。内向的だったが成績優秀。理工学部卒業後、IT企業にてSEとして活躍。36歳時、見合結婚。同時期より睡眠薬を服用。

40歳時、睡眠薬を服用後、妻へ暴行、別居となった。睡眠薬・脱抑制も否めないが、DVを克服するために集中内観をするも「3日目の壁」にて中断。3ヶ月後「パワハラ上司の罵倒する声が頭の中で響く」とのこと。抗精神病薬を処方したところ、速やかに静穏な状態に至った。

TEA. Trajectory Equifinality Approach
複線径路 等至性 アプローチ
症例;DV

考察
症例1は生育歴に問題あり、内観療法が奏功した。明らかな家族歴は認められず、衝動抑制症群ながら、心因性と考えられ、葛藤の解消が症状の改善に寄与した。

症例2も生育歴に問題あるが、遺伝素因、精神病症状を認め、抗精神病薬が著効したことから、内因性と考える。このような症例は、心理社会療法・施行前、適切な薬物療法が必要である。

内観療法の効果は説明するまでもない。限界は、内因性疾患において内観療法のような深い内省を求める心理療法は、葛藤を抑制できないことがある。疾患の種類を問わず、軽症・神経症レベルへ回復した後に行うことが望ましい。その前提として詳細な病歴聴取と正確な診断が必要である。

GAF. Global Assessment of Functioning 機能の全体的評価尺度


障害者総合支援法 精神症状評価

病態水準とは
神経症レベル;不安や恐怖を感じやすい群
境界例レベル;派手で突飛な行動を示す群
精神病レベル;奇異で風変わりな行動を示す群

現実検討能力;現実を正しく認識する能力、自我境界を正しく区別する能力
自己同一性;自己の記憶・思考・認知などの一貫性を保てているか、自己を一つのまとまりをもった人格として認識できるか
防衛操作;ストレスや欲求不満、葛藤などに対し、適切な防衛規制を用いられるか

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