前頭側頭型認知症(FTD:Frontotemporal Dementia)とは?
前頭側頭型認知症(FTD)は、脳の前頭葉(前頭部)や側頭葉(側頭部)が萎縮することで起こる認知症の一種です。特に性格や行動、言語機能に影響を及ぼし、アルツハイマー型認知症とは異なる特徴を持っています。
特徴
1. 原因
前頭側頭型認知症の主な原因は、脳内の異常なタンパク質の蓄積による神経細胞の変性です。
- タウタンパク(Tau):異常に蓄積し神経細胞を傷害
- TDP-43(TAR DNA-binding protein 43):異常に凝集し神経変性を引き起こす
これにより、脳の前頭葉(意思決定・感情制御)や側頭葉(言語・記憶)の萎縮が進行し、認知機能だけでなく性格や行動、言語の異常が顕著になります。
2. 症状
前頭側頭型認知症は、大きく「行動異常型(bvFTD)」と「言語障害型」(意味性認知症・原発性進行性失語)」の2つに分類されます。
タイプ | 主な症状 |
---|---|
① 行動異常型(bvFTD) | – 社会的ルールを守れなくなる(無礼な発言、反社会的行動) – 反復行動(同じ行動を何度も繰り返す) – 共感や感情の欠如(家族への無関心) – 食欲の変化(過食・特定の食べ物への執着) |
② 言語障害型(意味性認知症・原発性進行性失語) | – 言葉の意味が分からなくなる(意味性認知症) – 言葉が流暢に出なくなる(原発性進行性失語) – 会話が成り立たなくなる |
📌 アルツハイマー型認知症との違い
- アルツハイマー型 → 記憶障害が主症状
- 前頭側頭型 → 性格・行動の変化が主症状
3. 診断
前頭側頭型認知症の診断には、以下の方法が用いられます。
- 問診・行動観察(家族の証言が重要)
- 神経心理検査(FAB検査:遂行機能評価)
- 画像検査
- MRI・CT(前頭葉・側頭葉の萎縮確認)
- SPECT・PET(血流低下・代謝低下の評価)
- バイオマーカー検査(TDP-43やタウの異常蓄積)
4. 治療
前頭側頭型認知症の根本的な治療法はまだ確立されていませんが、症状の緩和や進行を遅らせるための治療が行われます。
① 薬物療法
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
- 行動異常(衝動性・無関心)を軽減
- 抗精神病薬(必要に応じて)
- 幻覚・妄想がある場合に使用
- 認知症治療薬(アリセプト等)は効果が薄い
② 非薬物療法
- 行動療法(ルールの再学習、環境調整)
- 言語リハビリ(発話能力の維持)
- 家族のサポート(介護負担の軽減策)
5. 予後と生活支援
- 平均発症年齢は50~60歳代と比較的若い
- 発症後の進行は個人差が大きい(5〜15年)
- 早期診断・適切な対応が生活の質を左右する
まとめ
前頭側頭型認知症は、性格や行動、言語能力の異常が特徴で、アルツハイマー型認知症とは異なるタイプの認知症です。社会性の低下や感情の変化が早期に現れるため、家族が異変に気付きやすいですが、誤診されることも多い病気です。早期診断と適切なサポートが重要です。