レム睡眠行動障害(RBD: REM Sleep Behavior Disorder)とは?
レム睡眠行動障害(RBD)とは、睡眠中に夢の内容に合わせて体を動かしたり、大声を出したりする異常な睡眠障害です。本来、レム睡眠(夢を見る睡眠の段階)では筋肉の動きが抑制されているはずですが、この抑制がうまく働かず、夢の中の動作を実際に行ってしまいます。
1. 主な症状
レム睡眠行動障害は、以下のような症状を伴います。
① 夢と連動した異常行動
- 寝言をはっきり話す(怒鳴る・叫ぶ)
- 手足を大きく動かす
- 殴る・蹴る・飛び起きる
- ベッドから落ちる
👉 夢の内容と一致した行動が多い 例:「夢の中で戦っていたら、実際にパンチをした」
② 本人が症状に気づかない
- 起床後、本人は覚えていないことが多い
- 家族やパートナーが異変に気づくケースが多い
③ ケガをする・させる
- 自分がベッドから落ちてケガをする
- 一緒に寝ている家族に手が当たり、ケガをさせる
📌 通常の夢見とは異なり、動きが大きく激しいのが特徴
2. 原因
① 神経伝達の異常
- 脳幹(橋・延髄)の異常により、レム睡眠時の筋弛緩が働かなくなる
- レム睡眠中でも体を動かせる状態になってしまう
② 関連疾患
- レビー小体型認知症(DLB)
- パーキンソン病(PD)
- 多系統萎縮症(MSA) 👉 これらの神経変性疾患の前兆として現れることが多い 👉 RBDの発症者の約50~80%が将来これらの疾患を発症する
③ その他の原因
- ストレス・睡眠不足
- 抗うつ薬(SSRIなど)の副作用
- アルコールの影響
3. 診断
レム睡眠行動障害の診断には、以下の方法が用いられます。
① 問診
- 睡眠中の異常行動について家族やパートナーからの情報を収集
- 本人の自覚は少ないため、家族の証言が重要
② 睡眠ポリグラフ検査(PSG)
- 脳波、眼球運動、筋電図を測定
- レム睡眠中に筋肉の動きがあるかを確認
4. 治療
レム睡眠行動障害の治療は、症状を抑える薬物療法と生活環境の調整が中心になります。
① 薬物療法
- クロナゼパム(リボトリール):GABAの働きを強め、症状を抑制
- メラトニン:睡眠の質を改善し、異常行動を軽減
② 生活環境の調整
- ベッドの周囲にクッションを置く(転落防止)
- 硬い家具や危険物を寝室から除去
- パートナーと別のベッドで寝る(安全対策)
- 睡眠不足やストレスを避ける
5. 予後と関連疾患
- RBDは神経変性疾患の前兆となる可能性が高い
- 10年以内にパーキンソン病やレビー小体型認知症を発症するリスクがある
- 早期発見・治療が将来的なリスク管理につながる
まとめ
レム睡眠行動障害(RBD)は、夢の内容に合わせて異常行動を取る睡眠障害です。レビー小体型認知症やパーキンソン病の前兆症状として現れることが多いため、早期の診断と対策が重要です。家族が症状に気づいたら、専門医(睡眠外来や神経内科)に相談することが勧められます。