レビー小体型認知症(DLB: Dementia with Lewy Bodies)とは?
レビー小体型認知症(DLB)は、脳内にレビー小体という異常なタンパク質(αシヌクレイン)が蓄積することで発症する認知症です。認知機能の変動、幻視、パーキンソン症状などが特徴で、アルツハイマー型認知症や前頭側頭型認知症とは異なる病態を示します。
1. 原因
レビー小体型認知症の原因は、レビー小体(αシヌクレインの異常蓄積)が脳の神経細胞内に広がることです。
- レビー小体は、大脳皮質、脳幹、小脳に広く分布
- ドーパミンやアセチルコリンの神経伝達が障害される
- 認知機能だけでなく運動機能や精神症状にも影響
レビー小体はパーキンソン病でも蓄積しますが、レビー小体型認知症はパーキンソン症状が出る前から認知機能が低下するのが特徴です。
2. 主な症状
レビー小体型認知症は、以下の**「三大症状」**が特徴的です。
① 認知機能の変動
- ある日は会話がスムーズにできるのに、別の日はぼんやりしている
- 注意力の低下と改善を繰り返す
- 記憶障害は比較的軽度(アルツハイマー型とは異なる)
② 幻視(リアルな幻覚)
- 「小さな子供がいる」「虫がいる」などの詳細な幻視が多い
- 本人は幻覚を現実だと思い込む
- 幻視の内容は「動物」「知らない人」が多い
③ パーキンソン症状
- 動作が遅くなる(動作緩慢)
- 手足のふるえ(安静時振戦)
- 歩行障害(すり足歩行・小刻み歩行)
- 転倒しやすくなる
📝 その他の症状
- レム睡眠行動障害(夢を見ながら体を動かす)
- 自律神経障害(便秘・低血圧・立ちくらみ)
- 薬に敏感(抗精神病薬の副作用が強く出る)
3. 診断
レビー小体型認知症の診断には以下の方法が用いられます。
- 問診・症状の評価
- 認知の変動・幻視・パーキンソン症状の有無を確認
- 神経心理検査
- MMSE(ミニメンタルステート検査)
- 注意力・視空間認知のテスト
- 画像検査
- MRI・CT(脳の萎縮評価)
- SPECT・DATスキャン(ドーパミン神経の減少を確認)
- 睡眠ポリグラフ検査
- レム睡眠行動障害の確認
4. 治療
① 薬物療法
- 認知機能改善薬
- ドネペジル(アリセプト):アセチルコリンを増やし、認知機能を改善
- パーキンソン症状の治療薬
- レボドパ(ドパミン補充):運動障害を改善
- 幻視・精神症状の治療
- 抗精神病薬は注意が必要(副作用が強く出やすい)
- クエチアピンやクロザピンが比較的安全
② 非薬物療法
- 環境調整(幻視の誤認を防ぐ)
- リハビリテーション(運動療法)
- 睡眠の改善(レム睡眠障害の管理)
5. 予後と生活支援
- 発症後 平均7~10年で進行
- パーキンソン症状が進行すると寝たきりになる可能性
- 介護負担が大きいため、家族のサポートが重要
まとめ
レビー小体型認知症は、認知の変動・幻視・パーキンソン症状が特徴的な認知症です。アルツハイマー型認知症と異なり、記憶障害よりも注意力や運動機能の問題が先行することが多いです。薬の副作用が強く出やすいため、治療は慎重に行う必要があります。早期診断と適切なケアが重要です。