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精神医学

ドクハラ:医者からの嫌がらせ


ドクハラ、ドクターハラスメント」とは「医師および医療従事者から患者さんに対して行われる不適切な言葉・行動・その他、全てを含む」と言われています。その提唱者、元癌研究会付属病院の医師だった土屋繁裕氏によると更に以下のような分類がなされています。

① 脅し型:強引に治療に従わせる
② 告知型:患者やその家族を絶望に追い込む
③ エゴ型:患者の治療や回復よりも病院の利益を優先する
④ 人間失格型:人間として許せない程、患者を傷つける
⑤ セクハラ型:産婦人科などで女性患者にセクハラする
⑥ ミスマッチ型:状況を理解せずちぐはぐな言動をする
⑦ 子どもへのドクハラ型:子どもの治療時に親へ行う

1~7は軽重ありますが、残念ながらどれも日本のどこかで現実に起こり、問題となっていることです。2~7は論外ですが、1は注意しないと脅さないまでも、多少は行われてしまいがちな事例です。と申しますのは、医療というのが特殊なサービスで、診断も治療も主に医者が主導権」をとってしまうからです。患者さんの立場としては病気の知識も治療の種類も医者以上に知っていることは少ないため、場合によっては目前の医者へまさに「命を預ける」ことになってしまうのです。


これまでの医者‐患者関係を説明するにあたりパターナリズム、家父長主義」と言われる概念があります。これは医療現場における医者と患者の力関係を家庭における父親と子供の関係になぞらえて説明したものです。すなわち、知識と経験がある医者を父親に、それの少ない患者さんを子供に見立てたものです。患者さんには失礼な話ですし、現代の都市部においては既に通用しないことと思いますが、実際のところ医師数の限られていた20‐30年前や、現在でも地方で医者の少ない地域などにおいて、しばしば認められる事実です。

医者は卒後間もない若い時から「先生」「お医者」などと呼ばれ、地位や立場を上に置かれてしまいがちです。そして、ともすると自分が全知全能であるかのごとく錯覚し、傲慢・尊大な態度に陥ってしまうのです。ベテラン・年配の医者もさることながら、卒後2-3年の研修医がわずかな知識と経験のもとに「偉く」なってしまうことさえあります。そもそも、医学部へ入学する学生には、善良で心優しい若者が大勢いますが、いわゆる「偏差値秀才」という者もいることは事実です。

これに対して最近ようやく高まっている概念がインフォームド・コンセント、説明と同意」です。そもそも1957年のアメリカにおける医療訴訟を契機に生じてきたものですが、昨今、訴訟の相次ぐ日本においても広く認知されてまいりました。「患者さんに対して病状を十分に説明し、同意を得た上で治療を行う」とで、基本には医者と患者さんとが目線の高さを等しくすることが求められます。一般社会においては当たり前のような話ですが、医療においては上記のような背景があったため、なかなか実現してこなかったのです。

但し説明し過ぎるのにも問題はあります。稀な薬の副作用をいくつも挙げれば、患者さんはむしろ不安になり服薬を躊躇ってしまいますし、特に精神科においては、うつ状態の患者さんは判断力や決断力が低下していらっしゃいますので、情報が多過ぎることで具合が更に悪くなってしまうこともあるからです。

「セカンドオピニオン」と呼ばれる診療形態も一般化してまいりました。定期的に通院している病院・医者とは別の病院・医者を受診し、診断と治療を再検討してもらうことです。その時の主治医を絶対的に信頼していれば不要ですが、なかなか病状が回復しなかったり、治療関係が揺らぎ、主治医へ不信や疑いを生じた時に行われているようです。これは過ぎるとドクターショッピング」に陥ってしまいますが、治療の初期や膠着している時には仕方ないことかとも思われます。

いずれにしても、現在の日本の医療において、改めて医者‐患者関係を見直す時期を迎えていることは間違いありません。患者さんにとってより良い関係・治療」を得られるよう様々な努力をしていかなければなりません。

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