🧠 精神医学的視点から見たテッド・バンディの分析
■ 1. 反社会性パーソナリティ障害(ASPD:Antisocial Personality Disorder)
DSM-5の診断基準では以下のような特徴が挙げられます(※要18歳以上・15歳以前から行動問題):
診断項目 | バンディの該当例 |
---|---|
法律を無視・違反する | 殺人、誘拐、逃亡など多数 |
嘘をつく・騙す | 偽名・偽装行為、嘘の自白など |
衝動的・計画性の欠如 | 突発的な殺人や逃走 |
攻撃性・暴力性 | 残虐な暴行・殺人 |
危険を顧みない | 法廷逃走、自ら弁護を買って出る |
無責任 | 就職・学業における不安定さ |
罪悪感や後悔の欠如 | 自分の行為を正当化し、反省がない |
→ バンディは、ASPDの診断基準をほぼ完全に満たすとされています。
■ 2. サイコパシー(Psychopathy)
サイコパスはASPDと類似しますが、より深い感情・対人関係の障害が特徴です。
精神科医ロバート・ヘア(Robert Hare)の「PCL-R(サイコパス診断チェックリスト)」では以下が重要項目:
項目 | バンディの特徴 |
---|---|
表面的な魅力 | 知的・清潔感・話術・女性にモテる |
誇大的な自己評価 | 自分を特別視し、法廷でも自弁護 |
病的な虚言 | 一貫性のない証言、被害者数も誤魔化し |
共感の欠如 | 被害者遺族への配慮なし、冷淡な言動 |
良心の欠如 | 殺人に対する罪悪感が見られない |
寄生的なライフスタイル | 他人を利用し、社会的責任を回避 |
→ バンディはPCL-Rで満点近くを記録したサイコパスとされます(※正式なスコアは非公開)。
■ 3. その他の精神病理的特徴
■ ネクロフィリア的傾向(死体性愛)
- 殺害後の遺体を操作・保存・性的接触 → 「制御と所有」の究極形
- 死体との関係を継続したいという異常心理(性的逸脱の一種)
■ 自己愛性パーソナリティ(NPD)的傾向
- 自分をヒーロー化する欲求が強く、注目されることを喜ぶ
- 裁判中も「テレビに映ること」に快感を覚えていたという証言あり
■ 解離傾向(Dissociation)やスプリッティング(分裂的思考)
- 自分の中に「モンスター」と「普通の自分」が共存していると表現したこともあり
- 良い自分と悪い自分を切り分けて認識していた可能性
🧩 精神医学的なキーワードまとめ
用語 | 概要 |
---|---|
ASPD(反社会性パーソナリティ) | 社会的規範を無視し、罪悪感が薄い |
サイコパシー(精神病質) | 感情・共感・良心の欠如を伴う重度の人格障害 |
ネクロフィリア | 性的倒錯の一種、死体への執着 |
自己愛性パーソナリティ障害 | 自己評価が過剰で、賞賛を過度に求める |
スプリッティング(分裂) | 善悪・白黒で物事を分ける極端な認知スタイル |
✍ まとめ
テッド・バンディは、精神医学的には典型的な重度サイコパス/反社会性パーソナリティ障害者であり、そこに性的逸脱や誇大自己、共感性の欠如などが複合していると考えられています。
彼のようなケースは「単独の診断」では捉えきれない複雑な精神病理の見本として、今も研究対象とされています。