「リワーク(Return to Work 職場復帰)」は、休職後、規則正しい生活を送ることができ、復職可能かと思われるレベルまで回復した時に行う最後の仕上げです。但し、本人は復職可能と思っていても、職場が求めるレベルには乖離があるものです。これを「復職準備性」と定義しています。
「リワークプログラム」は具体的に、主に毎朝の通勤練習、以前の職務に準じた職業訓練、うつ病を予防するための心理教育(情報提供)、そして認知行動療法などから成り立ちます。
認知行動療法は即時的な「自動思考」から、より深い「スキーマ」という、性格や気質に近いところまで調べ、より楽な生き方を模索していく模索していきます。その際は、認知行動療法にとらわれず、精神分析療法や森田療法・内観療法など様々な心理療法の手法を柔軟に利用されています。
また、施設によっては、食事療法、運動療法、園芸療法のような、これまで、オフィスワークでなおざりにされてきた「身体」へのケアを行っています。
しかし、リワーク施設は限られており、通所期間も長期間を求められることが少なくないため、どなたでも利用できるとは限りません。特に中小企業は社員へ何カ月間も休職を許容できる余裕がないため、ある一定期間で復職を求めることがよく見受けられます。
そこで、自分でもある程度できる「セルフリワーク」をご紹介しましょう。
- 規則正しい生活
当たり前ですが「早寝早起」が第一です。理想は21時に就寝、6時に起床しましょう。どちらの病院へ入院しても、消灯時間は21時、起床時間は6時が標準です。そもそも、人間の身体は日の出とともに目を覚まし、日の入りとともに眠るよう「体内時計」が設定されているのです。それには、「睡眠覚醒リズム表」や「生活行動記録表」を記録し、自分の生活を客観的に認識しましょう。いわゆる「セルフモニタリング」の第一歩です。 - 図書館への通所
最も安価で効果的なセルフリワークの場所は「図書館」です。まず最寄りの図書館へ通ってみましょう。開館時間の9-10時に入館し、「自習室」に3時間、滞在することからはじめ、1週間毎に1時間ずつ伸ばし、最終的に、お昼休憩1時間を入れ、8時間、滞在することを目標としましょう。途中から職場の近くの図書館へ移動できればなお良いでしょう。ちなみに銀座泰明クリニックそばの図書館は「千代田区立、千代田図書館、日比谷図書館」が新しく、皇居や公園に隣接しているため、とても居心地が良いところです。 - 通勤練習
図書館へ定期的に通所できるようになりましたら、いよいよ元職場へ通勤練習をしてみましょう。なかにはパワハラやセクハラなどのトラウマ体験を負われ、とても近づきたくないと思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、復職を望まれるならば避けて通れません。まずは、職場の最寄り駅まで1週間、通ってみましょう。次は職場の近くまで行ってみましょう。その際、上司や同僚や後輩に出くわしたらどうしようと思うのは当然の不安です。そこを覚悟の上、はじめは1-2時間遅らせ近づいてみましょう。これは西洋の行動療法にて「暴露療法 Exposure Therapy」と呼ばれ、日本の森田療法では「恐怖突入」と言われるスキルです。 - 職場復帰
いよいよ最後の職場復帰です。しかし、功を求め、焦ってはいけません。これも図書館への通所と同様に、はじめは3時間/日からはじめ、週1時間ずつ延ばしていくことをお勧めします。理想は1‐3カ月間かけて、職場へ馴染んでいきましょう。久しぶりの職場ですし、自分は休職療養していたという負い目がありますから、少しずつ慣らしていくのが肝要です。ともしますと、これまでの負い目を埋め合わせようと、前のめりになってしまうものですが、そこを敢えてじっと耐え、調整しましょう。そして、上司や同僚、人事部や産業医らの信頼を再獲得してまいりましょう。