セクハラ、セクシャルハラスメントとは職場や学校などにおいて、相手の意思に反し、性的な言葉や行為を行い、不快な心理に陥らせることを言います。多くは男性上司から女性部下に対して行われます。直接的に性的な発言や行動を起こすものから、間接的に人事や環境に影響をもたらすものまで、その範囲や程度は多岐に及びます。部下である女性は不快に感じながらも、上司である男性に対して強く反抗することできず、我慢していることが大半です。パワハラ同様、かつての日本の封建的・男性中心な職場では日常茶飯事、行われていたようですが、昨今、国際的な男女平等の社会を向かえ、問題行為として改めて取沙汰されるようになっています。
驚くべきことは、セクハラ事件が身近な普通の職場をはじめ、世間で言われる有名企業や有名大学でも生じていたことです。被害者は女子社員や女子学生であり、加害者は幹部社員や指導教授でした。加害者には有能な人物も少なくなく、仕事や研究において誇り高い業績を挙げていたにもかかわらず、裏側では猥褻な言動を繰り返していました。事例化する前には注意や警告があったにもかかわらず繰り返されていました。
これは男性の性衝動というものが高度な理性的思考によっても抑制されがたいことの一つの証左であると考えられます。男性の性衝動は男性ホルモン、アンドロゲン~テストステロンに強く影響されますが、積極的・攻撃的な行動をはじめ、支配欲や征服欲もこの男性ホルモンに左右されるところが少なくないといいます。従って、積極的で支配欲も強い社会的地位のある男性が、ともすると自分の立場も省みず、配下の女性に対して嫌がらせとなる性的な言動を取ってしまうのでしょう。いわゆる「英雄、色を好む」という文句もありますが、しかし本当に有能で信頼される男性ならば、部下の女性の立場や心境を十分に考えて言動しなければなりません。
一方で、心療内科・精神科へは被害者である女性の方々が数多く受診されます。男性上司から性的に不快な言動をされたり、職務や人事で差別されたりと被害の状況は様々であります。皆様方、心が深く傷ついていらっしゃり、眠れなくなったり、悪い夢を見るようになったりされています。朝は会社へ行くのが嫌になり、行ったとしても今まで通り集中して仕事ができなくなってしまいます。そして、休職や辞職をされる方も少なくなくありません。自宅で休んでいると、嫌がらせをされたのにどうして自分が休んだり辞めたりしなければならないのかと悔しくて仕方ありません。怒りや悔しさを覚えられる方は未だ良い方で、あのようなことをされたのは自分が悪かったのかと自責的になったり、自己嫌悪に陥ったりされる方さえもいらっしゃいます。最悪の場合は手首自傷(リストカット)をされたり、過食嘔吐を繰り返されたりするようになります。
このような症状を生じた時は、事態を冷静に省みて、ご自身には然程の非はなく、悪いのは相手の上司であると改めて自覚することが必要です。そして気持ちが癒されてから、相応の慰謝を求めることも可能です。しかし職場や周囲の評価はどうしても地位ある男性上司へ傾いてしまいますから、その際は十分な準備や協力が必要となります。従って、対処の方法としてはパワハラの場合と同様に、セクハラであると認識すること、職場内に理解者・協力者を求めること、レベルに応じては告発・訴訟も辞さないことが必要です。それにはお近くの精神科医や弁護士とご相談されることをお勧め致します。