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精神医学

ゲーム依存症の精神医学

1. ゲーム依存症とは?

ゲーム依存症(ゲーム障害, Gaming Disorder)は、インターネットゲームやビデオゲームに過度に没頭し、日常生活や社会活動に支障をきたす精神疾患です。
WHO(世界保健機関)は、ICD-11(国際疾病分類第11版)において「ゲーム障害(Gaming Disorder)」を正式な精神疾患として分類しました。
また、DSM-5(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では「インターネットゲーム障害(Internet Gaming Disorder: IGD)」として追加研究が必要な疾患(Section III)に分類されています。

ゲーム依存症は、行動嗜癖(行動依存症)の一種であり、ギャンブル障害(賭博症)と類似した脳内メカニズムを持ちます。


2. ゲーム依存症の診断基準(DSM-5, ICD-11)

(1) DSM-5: インターネットゲーム障害(Internet Gaming Disorder)

12か月以内に以下の9つの症状のうち5つ以上を満たす場合に診断されます。

  1. ゲームに過度に没頭する
    • 1日の大部分をゲームのことを考えて過ごす。
  2. ゲームの時間が増えていく
    • 以前よりも長時間ゲームをしないと満足できない。
  3. ゲームをやめようとするとイライラや不安が強まる(禁断症状)
    • ゲームを制限されると、不安や抑うつが強くなる。
  4. ゲームを減らそうとしても失敗する
    • ゲーム時間を減らそうと決意しても何度も挫折する。
  5. ゲームにより日常生活(学業・仕事・対人関係)が損なわれる
    • 学業成績の低下、欠勤、社会的孤立などが見られる。
  6. ゲームのために重要な活動を放棄する
    • 趣味、友人との交流、運動などの活動が減る。
  7. ゲームを続けるために嘘をつく
    • 家族や友人にゲーム時間を隠す。
  8. ネガティブな感情(ストレス・不安・抑うつ)の解消手段としてゲームを使う
    • ゲームがストレス対処法の中心になっている。
  9. ゲームをしているにも関わらず、さらにプレイし続ける
    • 既に悪影響が出ているのに、やめられない。

(2) ICD-11: ゲーム障害(Gaming Disorder)

ICD-11では、ゲーム障害は以下の3つの特徴を持つとされています。

  1. ゲームをコントロールできない(制御困難)
    • ゲーム時間を自分で調整できず、プレイを続けてしまう。
  2. ゲームが生活の最優先事項になる(依存)
    • 他の活動よりもゲームを優先し、日常生活に支障をきたす。
  3. 悪影響があるにも関わらずゲームを続ける(問題の持続)
    • 学業・仕事・健康・人間関係に悪影響が出てもゲームをやめられない。

この状態が12か月以上持続する場合に診断される。


3. ゲーム依存症の脳科学的メカニズム

ゲーム依存症は、報酬系の過活動・衝動制御の低下・ストレス応答の異常が関与していると考えられています。

(1) 報酬系の異常(ドーパミン過活動)

  • ゲームをプレイすると、側坐核(Nucleus Accumbens) から ドーパミン が放出され、「快感」や「達成感」を感じる。
  • ゲームの報酬(勝利、レベルアップ、新アイテム獲得など)が即時に得られるため、脳が「強化学習」しやすい。
  • ゲームをプレイし続けないと満足できない状態に陥る(ドーパミン過剰刺激による鈍化)。

(2) 前頭前野(Prefrontal Cortex)の機能低下

  • 前頭前野は 「衝動抑制」や「理性的判断」 を司るが、ゲーム依存の人ではこの機能が低下している可能性がある。
  • その結果、「もうやめよう」 という判断が働きにくくなる。

(3) ストレス応答の異常(コルチゾール)

  • ゲーム依存症の人は、ストレスホルモン 「コルチゾール」 の分泌が異常になりやすい。
  • ストレスを感じると、無意識にゲームを求める(逃避行動)。

(4) 認知の歪み

  • 「ゲーム内での成功=現実世界での成功」
  • 「ゲームをやめたら楽しみがなくなる」
  • 「ゲームは悪くない、問題なのは周りの理解がないことだ」

4. ゲーム依存症の心理学的要因

(1) ストレス・気分調整

  • ゲームがストレス解消の手段となり、依存を引き起こす。

(2) ソーシャル要因

  • オンラインゲームでは、プレイヤー同士の交流が「逃れられない責任感」を生み、長時間プレイを強いる。

(3) 認知バイアス

  • 「もう少しで勝てる」という認識がプレイを継続させる。

(4) 幼少期の環境

  • 幼少期からゲーム中心の生活を送っていると、ゲームが自己アイデンティティの一部となる。

5. ゲーム依存症の治療

(1) 認知行動療法(CBT)

  • 「ゲーム=快感」という学習パターンを修正する
  • 「やめたらつまらない」という認知の歪みを修正する
  • 代替行動を学ぶ(運動・趣味の導入)

(2) 環境調整

  • ゲーム時間を制限する(タイマー設定)
  • スマホやPCの通知をオフにする
  • 家族と一緒に過ごす時間を増やす

(3) 薬物療法

  • SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
    → 衝動を抑制し、気分の安定を促す。
  • ムードスタビライザー(気分安定薬)
    → 双極性障害を合併している場合に有効。

(4) 自助グループ(GA: ギャンブラーズ・アノニマス類似)

  • 同じ問題を抱える人と交流し、行動変容を促す。

6. まとめ

ゲーム依存症の特徴

  1. ゲームをコントロールできない
  2. ゲームが生活の最優先事項になる
  3. 日常生活・仕事・学業に支障をきたす
  4. 脳の報酬系(ドーパミン)、衝動制御(前頭前野)、ストレス応答の異常が関与

治療のポイント

  • 認知行動療法(CBT)
  • 環境調整(ゲーム制限・通知オフ)
  • 薬物療法(SSRI・ナルフキソンなど)
  • ストレスマネジメント
  • 自助グループの活用

ゲーム依存症は単なる「遊びすぎ」ではなく、精神医学的な治療が必要な疾患です。

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  • 3. ゲーム依存症の脳科学的メカニズム
    1. (1) 報酬系の異常(ドーパミン過活動)
    2. (2) 前頭前野(Prefrontal Cortex)の機能低下
    3. (3) ストレス応答の異常(コルチゾール)
    4. (4) 認知の歪み
  • 4. ゲーム依存症の心理学的要因
    1. (1) ストレス・気分調整
    2. (2) ソーシャル要因
    3. (3) 認知バイアス
    4. (4) 幼少期の環境
  • 5. ゲーム依存症の治療
    1. (1) 認知行動療法(CBT)
    2. (2) 環境調整
    3. (3) 薬物療法
    4. (4) 自助グループ(GA: ギャンブラーズ・アノニマス類似)
  • 6. まとめ
    1. ゲーム依存症の特徴
    2. 治療のポイント
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