アルツハイマー型認知症とは?
アルツハイマー型認知症(Alzheimer’s disease, AD)は、認知症の中で最も多いタイプであり、脳の神経細胞が徐々に変性・脱落することで記憶や思考、判断能力が低下していく進行性の疾患です。
特徴
1. 原因
アルツハイマー型認知症の主な原因は、脳内に蓄積する異常なタンパク質です。
- アミロイドβ(Aβ):脳内に蓄積し、「老人斑(ろうじんはん)」と呼ばれる斑点を形成。神経細胞を障害する。
- タウタンパク(Tau):神経細胞内に異常に蓄積し、神経原線維変化を引き起こす。 これらのタンパク質が蓄積することで、脳の神経細胞が死滅し、脳の萎縮が進行します。
2. 症状
アルツハイマー型認知症は、記憶障害が最も特徴的な初期症状であり、徐々に他の認知機能や日常生活にも影響を及ぼします。
進行段階 | 主な症状 |
---|---|
初期 | – 物忘れ(最近の出来事を思い出せない) – 同じことを何度も言う・聞く – 物を置いた場所を忘れる |
中期 | – 記憶障害の悪化(家族の名前を忘れる) – 時間・場所の認識障害(今が何時か分からない) – 服の着方や食事の仕方が分からなくなる – 幻覚・妄想・徘徊 |
後期 | – 言葉が話せなくなる – 食事が困難になる(飲み込めない) – 寝たきり状態になる |
3. 診断
アルツハイマー型認知症の診断には、以下の方法が用いられます。
- 問診・神経心理検査(長谷川式簡易知能評価スケール、MMSE など)
- 画像検査(MRI・CT:脳の萎縮を確認、PET・SPECT:アミロイドβの蓄積を評価)
- 血液・髄液検査(バイオマーカーによる診断)
4. 治療
現在のところ、アルツハイマー型認知症を完全に治す治療法はありませんが、進行を遅らせたり、症状を和らげる治療が行われます。
① 薬物療法
- アセチルコリンエステラーゼ阻害薬
- ドネペジル(アリセプト)
- ガランタミン(レミニール)
- リバスチグミン(イクセロン、リバスタッチ)
- NMDA受容体拮抗薬
- メマンチン(メマリー)
- 新規治療薬
- アデュカヌマブ(アデュヘルム)(アミロイドβを除去する)
② 非薬物療法
- リハビリテーション(脳トレ・回想法)
- 運動療法(ウォーキング・ストレッチ)
- 食事療法(DHA・EPA、地中海式食事)
5. 予防
アルツハイマー型認知症の発症リスクを減らすためには、以下の生活習慣が推奨されます。
- 運動(有酸素運動、筋トレ)
- 脳の活性化(読書、計算、パズル)
- 食生活(野菜・魚中心の食事)
- 社会的交流(友人との会話、趣味活動)
- 睡眠の質向上
まとめ
アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞の変性によって記憶や思考能力が低下する進行性の病気です。完全な治療法はまだ確立されていませんが、薬物療法や生活習慣の改善によって進行を遅らせることができます。早期発見・早期対応が重要なため、「最近物忘れが気になる」と感じたら、医師に相談することが大切です。