筆者(茅野分)の恩師、水野雅文先生による「心の病、はじめが肝心 早期発見、早期治療の最新ガイド」についてご紹介します。「心の病」に関する一次予防(発病予防)・二次予防(早期発見・早期治療)・三次予防(リハビリテーション)について、最新の知見が余すところなく、分かりやすく書かれています。
なかでも、第3章「心の病を重くしないコツ、病気は治り方が大事」の一節は読みごたえあります。「乗り越えた実感が大事、価値観を大きく変えなければ、がんばりきれません」「罹患することを、かえって奇貨と考え、新しい自分を獲得していくことが大事です。人生の価値、楽しみを積極的に見つけましょう。とくに、自己実現の方法を会社以外に見つけることは、どんなに人にも大切です。精神疾患からの回復記念に『生き方は一つではない』と考え直してみるのもいいことだと思います」は水野先生ならではの「リカバリー」の定義ではないかと思うほどに説得力があります。心の病になることは、病自体の苦しみもさることながら、「心の病」であることの「スティグマ(偏見)」に、周囲の視線、そして自尊心が傷つき、苦しみます。このため、本当の「リカバリー」とは水野先生のおっしゃるように、病を「乗り越え」、むしろより良い生き方や人生観を身につけることだと言えるでしょう。
さらに、第5章「『心に効く』生活習慣とは?」における「ポジティブシンキング」「『楽しいときを』を心に刻んでおく」「小さな趣味の大きな価値」「運動は『万薬の長』」「心の栄養-『地中海ダイエット』」「家族関係をつくり直す」は水野先生の人生観が具体的に語られているようで貴重です。「毎日、笑顔で」「ポジティブに」働くための生活習慣がいくつも紹介されています。心の病に罹(かか)られた方はもとより、健康な方も、より健康になるため、ぜひ一度ご一読くださいませ。