「諺(ことわざ)」とは昔から言い慣らわされ、人間や人生・生活の「真理」を突いた簡潔な表現。本来は「言(こと)の業(わざ)」であり、言葉による表現のすべてを意味したけれど、やがて巧みな例えに限定されました。主に庶民の生活・体験から生じましたが、古典の格言や故事などから生じ、世間に流布しました。したがって、格言との相違は厳密に定義できません。諺の諺たるゆえんは、簡潔で語呂がよく、的確に人生を表現しており、短時間で感心させられることです。精神科の診察でも、しばしば「ことわざ」を用いて、患者さんにより良いご理解をいただけるよう努めている次第です。
- 石の上にも三年
「石の上にじっと3年も座っていれば、石も暖まる」ということからどんなに辛くても辛抱していれば、やがて、何らかの変化があって、好転の芽が出てくると言うこと - 雨垂れ石を穿つ
「努力」を続ければ、やがて「成功」するというたとえ - 七転び八起き
「七回」転ぼうとも、「八回」起き上がる気概で再起する、何度「失敗」しても立ち直るということ - 失敗は成功の基
「失敗」してもそれに対する「反省と改善」を重ねることにより「成功」につなげることができること - 雨降って地固まる
「問題」を生じても、それを「解決」すれば、その前より良い状態になっていること
- 若い時の苦労は買ってでもせよ
若い時の「苦労」は必ず貴重な「経験」となり、将来、役立つものであるということ - 艱難、汝を玉にする
「困難」に直面し、苦しみ悩みながら「克服」していくことで立派な人間になるということ - 窮すれば通ず
「行き詰まる」と、意外に状況を打開する道が「拓ける」ということ、最後まで諦めないこと - 起きて半畳、寝て一畳
起きて「読書」するには半畳、寝る(眠る)には一畳で十分、「清貧」の精神が重要ということ - 過ちを改めざるを、これ過ちと謂う
「過ちを生ずる」ことより、「過ちを改めない」ことの方が、重大な間違いだということ
- 急がば回れ
「危険な近道」より「時間がかかっても、安全な道」を選択することが、目的へ到達するということ - 急いては事を仕損じる
「急いでいる時」ほど、落ち着き、冷静に行動するべきであるということ - 損して得取れ
「短期的」には損をしつつも「長期的」には得するもの、目前の損失にとらわれないようにすること - 短気は損気
「短気」で行動すると、結局「損」する、一時の感情で行動しないようにすること
- 人事を尽くし、天命を待つ
自分に可能なことは全て行い(努力し)、あとは運命に任せるということ - 果報は寝て待て
「果報(朗報)」とは、自力で引き寄せるものでなく、焦らず待っていればよいということ - 待てば海路の日和あり
「現状」は悪くても、焦らず待っていれば「運」はやってくるということ - 陰徳あれば陽報あり
他人に知らせることなく、一人、善行を積んでいれば、必ず報いあるということ - 冬来たりならば、春遠からじ
苦しい時期を耐えれば、幸せな時期は必ず来るとということ
- 一年の計は元旦にあり
物事は初めが大事、および堅実な計画のもと着実に行うべきということ - 一日の計は早朝にあり
同上 - 蒔かぬ種は生えぬ
準備や努力をせず、良い結果が得られることはないということ
- 他山の石
他人の出来事や自分への批評が、自分の知徳を磨くことになるということ - 口は災いのもと
不用意に発言すると自分自身に災いを招く恐れがあるため、言葉は十分慎むべきということ - 言わぬが花
あけすけに言うより、黙っている方が、 粋(いき)あるいは奥ゆかしくということ - 情けは人の為ならず
相手へ親切にすれば、相手のためのみでなく、いずれ良い報いとなり自分へも戻ってくるということ - 他人の振り見て我が振り見直せ
他人の振る舞いを見て思うことあれば、我が振る舞いをも振り返り、改めるべきということ
- 無為自然
あるがまま、ことさら「知」や「欲」を求めず、自然に生きるべきということ - 上善如水
水は皆へ恵みを施し、誰とも争わず、より低い場所へ道を求めるという生き方のこと - 和光同塵
自分の才や徳を隠し、世俗に交わり、慎み深く、普通に暮らすこと
- 君子は豹変する
君子(賢者)は過ちを速やかに認め、考え方や振る舞い方を変えること - 君子は危うきに近寄らず
君子(賢者)はいつも慎んだ行動をし、危険はおかさないという - 君子の交わり淡きこと、水の如し
君子(賢者)の交際は淡泊であるが、交際自体はいつまでも変わることがないということ - 君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず
君子(賢者)は協調しても、主体性を失わず、むやみに同調しないということ
- 実ほどに頭を垂れる稲穂かな
技能や学業などが深まるほど、謙虚な姿勢になるということ - 能ある鷹は爪を隠す
能力のある人物ほど、披瀝することはないということ - 深い河は静かに流れる
思慮の深い人物ほど、ゆったりしており、やたら騒がないということ - 雄弁は銀、沈黙は金
「沈黙」は「雄弁」より価値あるということ - 勝って兜の緒を締めよ
成功しても、油断してはならないということ - 玉も磨かざれば、光なし
いくら才能があっても錬磨しなければ、大成することはないということ
- 人間万事塞翁が馬
一見、不運に思えたことが幸運につながったり、その逆だったりすること - 盛者必衰
現在、盛んに活躍している者も、必ず衰えるということ - 諸行無常
現世の事物は常に移り変る、永久不変はないということ