🧠 認知症の症状と治療について解説
認知症(Dementia)は、脳の認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす症候群です。アルツハイマー型、血管性、レビー小体型など、原因によって異なるタイプがあります。ここでは、主な症状と治療法を詳しく解説します。
🩺 1. 認知症の主な症状
認知症は 「中核症状」 と 「周辺症状(BPSD)」 に分けられます。
🧩 ① 中核症状(脳の障害に直接起因する症状)
- 記憶障害: 最近の出来事を忘れる(例:「食事をしたことを覚えていない」)
- 見当識障害: 日時や場所、人がわからなくなる
- 判断力・理解力の低下: 複雑な操作や計画ができなくなる
- 言語障害(失語): 言葉が出てこなくなる、会話が成立しない
- 実行機能障害: 順序立てて物事を進められなくなる
- 失認・失行: 身近な人や物を認識できない、日常動作ができなくなる
💥 ② 周辺症状(BPSD: Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)
個人の性格や環境の影響で現れる心理・行動的な症状です。
- 不安・抑うつ: 気分の落ち込みや無気力
- 幻覚・妄想: 「財布を盗まれた」などの被害妄想
- 興奮・攻撃性: 大声を出す、暴力的になる
- 徘徊: 場所の見当識障害による目的不明の歩行
- 睡眠障害: 昼夜逆転などの不眠
🧬 2. 認知症の主なタイプと特徴
🟡 ① アルツハイマー型認知症(AD)(全体の50~70%)
- 特徴: 記憶障害が初期から顕著
- 原因: βアミロイドタンパク質の蓄積による脳神経の破壊
- 進行: 徐々に認知機能が低下し、最終的には日常生活が困難に
🟠 ② 血管性認知症(VaD)(全体の20%程度)
- 特徴: 記憶障害よりも感情の起伏や注意力の低下が目立つ
- 原因: 脳梗塞や脳出血など脳血管障害による脳の損傷
- 進行: 階段状(突然悪化→安定→再び悪化)するのが特徴
🟢 ③ レビー小体型認知症(DLB)
- 特徴: 幻視(リアルな幻覚)、パーキンソン症状(手の震え、歩行困難)
- 原因: レビー小体という異常なタンパク質の蓄積
- 進行: 認知機能の変動が激しく、日によって調子が異なる
🟤 ④ 前頭側頭型認知症(FTD、ピック病)
- 特徴: 社会性の喪失、反社会的行動、人格の変化
- 原因: 前頭葉・側頭葉の神経細胞の変性
- 進行: 早期から行動異常が顕著で、記憶障害は後期まで目立たない
💊 3. 認知症の治療法
認知症は完全に治癒することは難しいですが、進行を遅らせたり、症状を和らげることが可能です。
🧠 ① 薬物療法
💡 中核症状に対する薬
- アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(主にアルツハイマー型に効果)
- ドネペジル(アリセプト)
- ガランタミン(レミニール)
- リバスチグミン(リバスタッチ・イクセロンパッチ)
- NMDA受容体拮抗薬(中等度~重度のアルツハイマー型に使用)
- メマンチン(メマリー)
💡 周辺症状(BPSD)に対する薬
- 抗精神病薬: 興奮、幻覚、妄想などを抑制
- 抗うつ薬: 抑うつ、不安の軽減
- 睡眠導入剤: 睡眠障害の改善
🧘♀️ ② 非薬物療法
- 認知機能リハビリテーション: 記憶トレーニングやパズルなどで脳を刺激
- 回想法: 昔の写真や音楽を通して記憶を引き出す
- 音楽療法: 音楽を使い、リラックス効果や感情表現を促進
- 運動療法: ウォーキングや体操で身体機能維持と脳の活性化
- アニマルセラピー: 動物とのふれあいで情緒を安定させる
🏡 ③ 生活環境の整備
- 転倒予防のため、段差や障害物を取り除く
- 家具や持ち物にラベルを貼り、わかりやすくする
- デジタル機器(見守りカメラ、GPS付きシューズ)で徘徊対策
- 規則正しい生活リズムを維持する(昼夜逆転防止)
🛡️ 4. 認知症の予防方法
- 運動習慣: 週3回以上の有酸素運動(ウォーキング、ヨガなど)
- 食事: 地中海式食事(魚、野菜、オリーブオイル中心)や和食を心がける
- 脳トレ: 読書、書道、将棋、囲碁、クロスワードなどの知的活動
- 社会交流: 趣味のサークルや地域活動に参加
- 十分な睡眠: 7時間前後の良質な睡眠を確保
- 慢性疾患の管理: 高血圧、糖尿病、高脂血症などをしっかり治療
💡 5. 認知症の治療は早期発見がカギ!
📊 認知症が疑われるサイン(受診目安):
- 同じ話を何度も繰り返す
- 財布や鍵などを頻繁に無くす
- 日付や約束を忘れる
- 慣れた道で迷う
- 言葉が出にくくなる
🏥 認知症外来での診断プロセス:
- 問診: 日常生活や症状についてのヒアリング
- 心理検査: 長谷川式認知症スケール、MMSE(Mini-Mental State Examination)など
- 画像検査: MRI・CTで脳の萎縮や梗塞の有無を確認
- 血液検査: 認知機能に影響を与える他の疾患(甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏症など)を除外
📝 まとめ
- 認知症は 中核症状(記憶障害など)と 周辺症状(BPSD) がある
- アルツハイマー型、血管性、レビー小体型、前頭側頭型 などタイプによって症状や進行が異なる
- 薬物療法 と 非薬物療法(リハビリ、回想法、音楽療法など) を組み合わせるのが効果的
- 認知症は 早期発見・早期治療が重要
- 生活習慣を見直すことで 予防 も可能