「衝動の心理学」は、人々はなぜ衝動的に行動するのか、どのように制御するのかを探求する研究です。正確には衝動とは「今すぐ欲望を満たそうとする、突発的で計画性のない行動」と定義されます。
- 衝動の種類
反応衝動;突然の出来事や刺激に対し、即座に反応してしまうこと。怒りを感じた時、相手にすぐに怒鳴り返す行動が該当します。
計画された衝動;衝動が事前に計画されている場合もあります。ダイエット中「今日は甘いものを食べてもいい」と考え、後で甘いものを食べる行動などです。 - 抑制制御と自制心
抑制制御は、衝動的な行動を抑える力です。これは、欲望や感情が高まった時、それを制御して計画的な行動を取る能力です。自制心は、抑制制御を実践する力で、長期的な目標を達成するため、短期的な欲望を抑えることができるかどうかに関わります。 - 遅延満足の理論
遅延満足とは、即座の報酬を求める衝動を抑え、より大きな報酬を得るために待つ能力を指します。この概念は、1960年代のスタンフォード大学で行われた「マシュマロ実験」により有名になりました。実験で、子供たちが目の前のマシュマロをすぐに食べるか、少し待つことで2個目のマシュマロを得るかという選択を与えられました。待つことのできた子供たちは、将来的により良い成果を得る傾向があることが示されています。 - 行動主義的視点
行動主義では、衝動的な行動は「強化」により形成されると考えられています。衝動的な行動が何度も「報酬」をもたらすと、その行動が強化され、将来的に繰り返される可能性が高くなります。逆に「罰」が伴う場合、その衝動的行動は減少することが期待されます。 - 認知的要因
衝動は、個人の認知的な歪みや短期的な思考パターンによっても引き起こされます。「今だけだから」という考え方や「一度だけなら大丈夫」という「自己正当化」が、衝動的な行動を引き起こすことがあります。 - 感情と衝動
感情が強くなると、衝動的な行動を引き起こしやすくなります。怒り、不安、喜びなどの感情がピークに達するときに、冷静な判断を下すのが難しくなり、衝動的な行動が起きやすくなります。 - 人格特性
人格特性の中には、衝動性に関連するものがあります。「神経症的傾向」が高い人は、感情的に不安定であり、衝動的な行動を取りやすいとされています。「外向性」が高い人も、刺激を求める傾向が強く、衝動的な行動を取りやすいとされています。 - 社会的・文化的影響
社会的環境や文化も、衝動に影響を与えます。消費文化が強い社会では、衝動買いが促進されます。ストレスフルな環境や衝動を許容する文化的な価値観も、衝動的な行動を増加させる要因となります。 - 治療法と対処法
衝動制御には、認知行動療法が有効です。これは、衝動を引き起こす行動や考え方を変えることで、衝動的な行動を減少させることを目指します。マインドフルネスや自己調整技術も、衝動の制御に役立ちます。