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精神医学

自閉症と依存症

自閉症と依存症は異質の疾患と定義されていますが、昨今、併発することも多々、報告されています。自閉症者は特に対人関係、社交場面において強い不安・緊張を覚えるため、これを緩和する目的で、精神作用物質(アルコールやタバコなど)を依存・乱用することがあります。一方、自閉症の特性である自閉・固執(ひきこもり・こだわり)が物質のみでなく、行為・プロセス、対人関係などの依存を伴うことも考慮されます。下記に解説を加えます。


自閉症とは、社会性・コミュニケーション・イマジネーションの障害を三徴とします。具体的には、他者と円滑な関係を築けない、一方的な意思疎通を行う、自分のこだわりに執着するということなどです。このため対人関係に困難を覚え、必要に迫られた時、強い不安・緊張を和らげるため、アルコールやタバコ、合法・違法薬物を摂取します。アルコールは「社会の潤滑油」と言われます。自閉症者には対人関係は「ギリギリときしむ」ことが多いため「潤滑油」を摂取することにより、滑らかになるのです。


しかし、アルコールやタバコはじめ精神作用物質は依存・乱用の危険をはらんでいます。違法薬物は自明ですが、医療機関にて処方される医薬品に危険性があるという認識はなかなか得られません。さらにコンビニエンスストや自動販売機でも安価で容易に購入できるアルコールやタバコは嗜好品と考えられています。このため依存・乱用される可能性は高いものの、あまり規制されず放置されています。


一方、自閉症の特性である自閉・固執(ひきこもり・こだわり)が物質のみでなく、行為・プロセス、対人関係などの依存を伴うことも考慮されます。具体的に、収集(コレクション)、賭博(ギャンブル)などは自閉症者に親和性の高い行動でしょう。他者と関わらず、自分の世界で完結できる趣味や楽しみです。昨今インターネット・スマートフォンでも、入手や購入できるため、気づくと高額となり、任意整理・自己破産まで至ることもあります。


自閉症者は対人関係を回避しますが、構築された関係に依存することもあります。それが一方的になると他者は迷惑と感じます。男女関係においてはストーカーが相当します。相手の気持ちや立場を考えることなく、考えることができず、一方的に関係を求めます。また不特定・他者に対する性的な行為は性犯罪と認知されることもあります。これらは触法行為として処罰されますが、精神医療の観点からは自閉症・依存症として治療されるべきでしょう。


このように、自閉症と依存症は異質の疾患と定義されますが、様々な点から併発することが報告されています。この事実を治療者は改めて認識し、特性や病理を理解した上で対応するべきでしょう。併発事例は困難事例であり、従来の定型治療では回復は見込めません。治療においては、患者さんより詳細に症状、困っていることをうかがい、一つ一つ、具体的な対処方法を考慮することです。


精神疾患は特効薬で治癒することは少なく、適切な向精神薬を用いながら、心理・社会的な治療を組み合わせていくことにより、寛解を目指します。それには、治療者の一方的な関わりでなく、患者さんの主体的な行動も必要です。依存症という物質・行動・一方的な対人関係に固執していた現状を振り返り、言葉や文字により困難を覚えた心理を説明する作業が望まれます。これは精神療法・心理療法の目指すべき到達点です。

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