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精神医学

性依存症の回復過程

性依存症の回復過程

性依存症(セックス依存症、性嗜好障害)の回復は、単に性的行動をやめることではなく、根本的な心理的・行動的な問題を克服し、健全な生活を取り戻す長期的なプロセスです。性依存症は「完治」するものではなく、「回復を続ける病気」と考えられており、再発のリスクを管理しながら継続的に治療を進めることが重要です。


1. 問題の認識(否認から受容へ)

  • 初期の否認
    • 多くの性依存症者は、自分の行動が問題であることを認めたがらない。
    • 「単なる性欲が強いだけ」「自分の趣味の範囲」などと考え、依存症とは思わない。
    • しかし、性生活の問題、パートナーとの関係悪化、職場でのトラブル、金銭問題(風俗・AV・課金ポルノなど)などが起こり、周囲からの指摘が増える。
  • 危機を経験する
    • 家族やパートナーに知られる、不倫・浮気が発覚する、仕事を失う、性犯罪に関与する、経済的に破綻するなどの出来事を経験し、問題を自覚する。
    • 「自分はおかしいのではないか」と感じるようになり、治療を考え始める。

2. 断性行動の決意と初期治療

  • 専門機関を受診する
    • 性依存症は心理的な要因が関係するため、精神科や依存症専門の治療を受けることが必要。
    • セックス・アディクツ・アノニマス(SAA)などの自助グループに参加することも有効。
  • 性的行動の管理
    • トリガー(誘因)を特定し、回避する。
      • ストレス・孤独・不安・退屈・アルコールなどが性依存を引き起こす要因となることが多い。
    • ポルノ・アダルトコンテンツの遮断
      • スマホやPCにフィルタリングをかける。
      • 性的刺激の強いSNS・アダルトサイトをブロックする。
    • 危険な環境を避ける
      • 風俗店・ラブホテル・出会い系アプリ・ナイトクラブなど、性的な誘惑が多い場所に近づかない。
  • 離脱症状の克服
    • 性行動をやめると、渇望(クレイビング)が強くなる。
    • イライラ、不眠、不安、抑うつ症状が出ることもある。
    • これを乗り越えるために、カウンセリングや認知行動療法(CBT)を活用する。

3. 断性行動の維持(リハビリと心理療法)

性依存は「やめる」ことよりも「やめ続ける」ことが難しい。断性行動を維持するために、以下の治療を受ける。

  • 認知行動療法(CBT)
    • 性的衝動をコントロールする方法を学ぶ。
    • 性的欲求を感じたとき、代わりにできる行動を見つける(運動、読書、趣味など)。
    • 誘惑に負けそうになったときの「緊急対応プラン」を準備する。
  • セックス・アディクト・アノニマス(SAA)
    • 12ステッププログラムを通じて、仲間と支え合いながら回復を目指す。
    • 自分の過去を振り返り、性依存が生まれた原因を理解する。
  • トラウマ治療(必要に応じて)
    • 性依存症者の中には、過去に性的虐待やトラウマを経験している人もいる。
    • PTSDや愛着障害の治療を並行して行うことが回復につながる。
  • 生活習慣の改善
    • 運動・瞑想・健康的な食生活を取り入れ、ストレスを減らす。
    • 健康的な人間関係を築くため、パートナーや家族とオープンな対話を持つ。

4. 社会復帰と再発防止

  • 健全な人間関係の構築
    • 性依存症者は、しばしば「性的なつながり」を重視しすぎる傾向がある。
    • 健全な友情・恋愛関係を築くことを学ぶ。
    • 共依存的な関係(相手を利用し合う関係)から脱却する。
  • 仕事・家庭の再構築
    • 性的行動が原因で仕事や家庭を失った場合、新たなスタートを切る。
    • 信頼を取り戻すために、家族と話し合い、約束を守る努力をする。
  • 再発(スリップ)のリスク管理
    • 性依存症は「完治」ではなく、「回復を続ける病気」。
    • 強いストレスや環境の変化があると、再び性的行動を求めたくなることがある。
    • 「一回くらいなら大丈夫」という考えが、依存の再発につながる。
    • もしスリップ(1回だけ性的行動をしてしまう)があっても、「もうダメだ」と絶望せず、すぐに治療や支援に戻ることが大切。

5. 長期的な回復と自己成長

  • 「性依存のない人生」を楽しむ
    • 性的行動に依存しなくても、充実した人生を送れるように、新しい趣味や目標を見つける。
    • 健康的な恋愛やパートナーシップを築く。
  • 依存症からの学びを活かす
    • 回復した人の中には、自助グループで他の依存症者を支援する人もいる。
    • 自分の経験を活かし、社会貢献につなげることで、自己肯定感を高める。

まとめ

性依存症の回復は、以下のようなプロセスを経る長期的な取り組みです。

  1. 問題を認識する(否認 → 受容)
  2. 断性行動の決意(環境調整・トリガー回避)
  3. 心理療法・リハビリ治療(健全な生活への移行)
  4. 社会復帰(再発防止と人間関係の再構築)
  5. 長期的な回復(性依存のない充実した人生)

性依存症の回復には、本人の努力だけでなく、家族・専門医・自助グループなどのサポートが欠かせません。回復の道は長く、再発のリスクもありますが、適切な治療と支援があれば、多くの人が健康な生活を取り戻すことができます。

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