LINE を使った受診日時のお知らせを一時的に休止しています。詳しくはこちらをご覧ください。

東京・銀座の心療内科・精神科・メンタルクリニック

オンライン
予約
お問い合わせ
アクセス
診療時間
精神医学

双極症の発症過程

双極症(双極性障害, Bipolar Disorder)の発症過程

双極症(双極性障害)は、「躁状態(気分の高揚)」と「うつ状態(気分の低下)」が周期的に繰り返される精神疾患です。発症には遺伝・環境・神経伝達物質の異常が関与しており、通常、10代後半~30代前半で症状が現れることが多いです。


1. 発症のリスク要因(Risk Factors)

① 遺伝的要因

  • 家族に双極症の人がいると発症リスクが高まる(遺伝率は約60~80%)
  • 特定の遺伝子(ANK3、CACNA1C など)が関与している可能性

② 生物学的要因

  • 脳内の神経伝達物質(ドーパミン・セロトニン・ノルアドレナリン)の異常
  • 前頭前野や扁桃体の機能異常
  • 概日リズム(体内時計)の乱れが影響を及ぼす

③ 環境要因

  • 強いストレスやトラウマ(虐待、いじめ、家庭環境の問題)
  • 極端な生活習慣の乱れ(睡眠不足・不規則な食事)
  • 薬物・アルコールの使用(覚醒剤・大麻・抗うつ薬の影響)
  • 季節の変化やホルモンバランスの影響

2. 発症の段階(Progression of Bipolar Disorder)

① 前駆期(Prodromal Phase):発症の前兆

この段階では、気分の変動が見られ始めるが、本人や周囲はまだ病気とは認識しにくい。

主な症状

  • 軽い気分の高揚(活動的になり、エネルギッシュに感じる)
  • 軽い抑うつ症状(悲観的になり、無気力な時期がある)
  • 睡眠リズムの変化(夜更かしが増える、朝起きられない)
  • 仕事や学業のパフォーマンスの変化
    • 「突然やる気が出て、集中して取り組める時期」がある
    • 「急に無気力になり、何もしたくなくなる時期」がある
  • 衝動的な行動が増える(無計画な買い物・リスクのある行動)

② 初発エピソード(First Episode):最初の躁状態またはうつ状態

双極症の発症は、多くの場合「うつエピソード」から始まるが、「躁エピソード」から始まることもある。

躁エピソード(Manic Episode)の特徴

  • 異常な高揚感や自信過剰(自分は特別な存在だと感じる)
  • 異常なエネルギーの増加(睡眠時間が減るが疲れない)
  • 考えが次々に浮かび、話が止まらない
  • 金遣いが荒くなる、リスクの高い行動を取る
  • 周囲とトラブルが増える(喧嘩が多くなる、仕事を急に辞める)

うつエピソード(Depressive Episode)の特徴

  • 気分の落ち込みが続く
  • 興味・関心の喪失(趣味や好きなことも楽しめない)
  • 極度の疲労感・無気力
  • 自責の念が強くなる(「自分はダメな人間だ」と思い込む)
  • 最悪の場合、自殺願望が生じることもある

③ 周期的な気分の変動(Cycling Phase)

躁とうつを繰り返すようになる段階。最初は年に1回程度のエピソードが、治療を受けないと次第に頻繁になり、生活に大きな影響を与える。

一般的なパターン

  • 双極Ⅰ型(Bipolar I):激しい躁状態と重度のうつ状態を繰り返す
  • 双極Ⅱ型(Bipolar II):軽躁状態(ハイになるが社会生活は維持できる)とうつ状態を繰り返す
  • 急速交代型(Rapid Cycling):1年に4回以上のエピソードを経験する

3. 慢性化と悪化のリスク

治療を受けないと、躁とうつの周期が短くなり、社会生活が困難になることが多い

慢性化すると起こる問題

  • 躁状態の衝動的な行動で人生が破綻(借金・対人関係の崩壊)
  • うつ状態で長期間働けなくなる
  • 薬物・アルコール依存を併発する
  • 希死念慮(自殺のリスク)が高まる

4. 早期治療の重要性

双極症は、早期に適切な治療を受けることで症状を安定させ、社会生活を維持できる可能性が高まる。

主な治療法

  • 気分安定薬(リチウム、バルプロ酸)
  • 非定型抗精神病薬(オランザピン、クエチアピン)
  • 認知行動療法(CBT):ストレス管理や再発防止に効果的
  • 生活習慣の改善(睡眠リズムの安定、過度な刺激を避ける)

まとめ

双極症は、「前駆期(気分の変動が出始める)」→「初発エピソード(躁またはうつがはっきり現れる)」→「周期的な気分の変動」→「慢性化」の流れで進行します。

💡 早期に適切な治療を受けることで、症状をコントロールし、安定した生活を送ることが可能です。

この記事は参考になりましたか?

関連記事

  • 双極症(双極性障害, Bipolar Disorder)の発症過程
  • 1. 発症のリスク要因(Risk Factors)
    1. ① 遺伝的要因
    2. ② 生物学的要因
    3. ③ 環境要因
  • 2. 発症の段階(Progression of Bipolar Disorder)
    1. ① 前駆期(Prodromal Phase):発症の前兆
      1. 主な症状
    2. ② 初発エピソード(First Episode):最初の躁状態またはうつ状態
      1. 躁エピソード(Manic Episode)の特徴
      2. うつエピソード(Depressive Episode)の特徴
    3. ③ 周期的な気分の変動(Cycling Phase)
      1. 一般的なパターン
  • 3. 慢性化と悪化のリスク
    1. 慢性化すると起こる問題
  • 4. 早期治療の重要性
    1. 主な治療法
    2. まとめ
  • -->
    PAGE TOP