LINE を使った受診日時のお知らせを一時的に休止しています。詳しくはこちらをご覧ください。

東京・銀座の心療内科・精神科・メンタルクリニック

オンライン
予約
お問い合わせ
アクセス
診療時間
精神医学

ポリヴェーガル理論

ポリヴェーガル理論(Polyvagal Theory)とは?

ポリヴェーガル理論は、アメリカの神経科学者**スティーブン・ポージェス(Stephen Porges)**によって提唱された理論で、自律神経系(特に迷走神経)がどのようにストレスや社会的つながりに関与しているかを説明するものです。

この理論によると、人間のストレス反応は単純な「闘争・逃走(Fight or Flight)」だけではなく、3つの神経状態によって変化することがわかっています。


1. ポリヴェーガル理論の基本:3つの神経状態

ポリヴェーガル理論では、自律神経系(特に迷走神経)の働きによって、人は以下の3つの異なる状態を取るとされています。

状態神経系の働き特徴
① 安全・社交モード(腹側迷走神経系・Ventral Vagal System)副交感神経(腹側迷走神経)が優位落ち着いており、人とつながりやすい
② 闘争・逃走モード(交感神経系・Sympathetic Nervous System)交感神経が優位ストレスを感じ、戦うか逃げるかの準備をする
③ 凍りつき・シャットダウンモード(背側迷走神経系・Dorsal Vagal System)副交感神経(背側迷走神経)が優位極度のストレスで無力感や解離が起こる

① 安全・社交モード(Ventral Vagal System)

  • 人とつながることができる
  • リラックスしている
  • 呼吸が深く、心拍が安定
  • 創造性や学習能力が高まる

この状態のとき、人は安心してコミュニケーションを取りやすくなり、社会的なつながりを感じられます。例えば、家族や友人と楽しく話しているときペットと触れ合っているときに、この状態になっています。


② 闘争・逃走モード(Fight or Flight / Sympathetic System)

  • ストレスや危険を感じると発動
  • 心拍数が上がる
  • 筋肉が緊張し、アドレナリンが分泌
  • 戦う(Fight)か、逃げる(Flight)準備をする

このモードは、「何か危険が迫っている」と脳が判断すると作動します。例えば、

  • プレゼンや試験の前で緊張して心拍が速くなる
  • 誰かに怒鳴られたときに、反論したり逃げたりする といった場面でこのモードになります。

ストレスが短期間であれば問題はないですが、慢性的なストレス状態になると、交感神経が過剰に働き、不安障害やパニック障害の原因になることがあります。


③ 凍りつき・シャットダウンモード(Freeze / Dorsal Vagal System)

  • 極度のストレスやトラウマで発動
  • 無力感や解離(ぼんやりする・現実感がなくなる)が起こる
  • 体が動かなくなる(フリーズ反応)
  • 抑うつ・意欲の低下

この状態は、「戦うことも逃げることもできない」と脳が判断したときに発動します。

  • 過去に虐待やいじめを受けていた人が、何も感じなくなる(解離)
  • トラウマの記憶がよみがえったとき、体が動かなくなる
  • 極度のストレスで「何をしても無駄だ」と感じる(学習性無力感)

このモードが長引くと、うつ状態や無気力になりやすく、社会的な関係も避けがちになります。


2. ポリヴェーガル理論が示す「回復」の鍵

✅ ① 社会的つながりを持つ

「安全・社交モード」を活性化するには、他者とのポジティブな関係が重要です。

  • 信頼できる人と話す
  • ペットと触れ合う
  • 安心できる環境を作る(部屋を心地よくするなど)

✅ ② ゆっくりした呼吸(腹式呼吸)

迷走神経は呼吸と深く関係しているため、深呼吸をすることで「安全・社交モード」に切り替えやすくなります。

  • 4秒かけて息を吸い、8秒かけて吐く
  • 瞑想やヨガ、マインドフルネスを取り入れる

✅ ③ 体を動かす

適度な運動(ウォーキングやストレッチ)をすると、「闘争・逃走モード」の交感神経を適度に発散し、「安全モード」に戻りやすくなります。

✅ ④ グラウンディング

「凍りつきモード(シャットダウン)」に入ったときは、意識を「今ここ」に戻すことが大事です。

  • 自分の足の裏の感覚を感じる
  • 冷たい水を触る
  • ゆっくりお茶を飲む

3. ポリヴェーガル理論とトラウマ治療

ポリヴェーガル理論は、トラウマやPTSDの治療に大きな影響を与えています

✅ ① トラウマの人は「凍りつきモード」に入りやすい

幼少期に虐待やいじめを受けた人は、「戦うことも逃げることもできない」状況が続いたため、無力感を学習してしまうことがあります。そのため、社会的なつながりを避けたり、何も感じなくなる「解離」を起こしやすくなります。

✅ ②「安全な環境」が回復の鍵

トラウマを持つ人が回復するには、まず**「安全・社交モード」に戻ることが必要**です。セラピーや支援の場では、クライアントが「安心できる」と感じられるようにすることが大切です。

✅ ③ 身体的なアプローチが有効

トラウマ治療には、**体を使ったアプローチ(ソマティック・エクスペリエンス、ヨガ、呼吸法など)**が効果的だとされています。これは、迷走神経の働きを整えることで、ストレス反応を和らげることができるためです。


4. まとめ

ポリヴェーガル理論は、自律神経の「安全・社交モード」「闘争・逃走モード」「凍りつきモード」の3つの状態を説明する理論。
社会的なつながりや深呼吸、運動などで「安全モード」に戻ることが大事。
トラウマを持つ人は「凍りつきモード」になりやすく、安全な環境が回復の鍵。
身体的アプローチ(ヨガ・呼吸法・グラウンディング)が、神経を整えトラウマ治療に有効。

ポリヴェーガル理論を理解すると、ストレスやトラウマに対する**「脳と体の反応」**をコントロールしやすくなります!

この記事は参考になりましたか?

関連記事

  • ポリヴェーガル理論(Polyvagal Theory)とは?
  • 1. ポリヴェーガル理論の基本:3つの神経状態
    1. ① 安全・社交モード(Ventral Vagal System)
    2. ② 闘争・逃走モード(Fight or Flight / Sympathetic System)
    3. ③ 凍りつき・シャットダウンモード(Freeze / Dorsal Vagal System)
  • 2. ポリヴェーガル理論が示す「回復」の鍵
    1. ✅ ① 社会的つながりを持つ
    2. ✅ ② ゆっくりした呼吸(腹式呼吸)
    3. ✅ ③ 体を動かす
    4. ✅ ④ グラウンディング
  • 3. ポリヴェーガル理論とトラウマ治療
    1. ✅ ① トラウマの人は「凍りつきモード」に入りやすい
    2. ✅ ②「安全な環境」が回復の鍵
    3. ✅ ③ 身体的なアプローチが有効
  • 4. まとめ
  • -->
    PAGE TOP