ニート(Not in Education, Employment, or Training)は、教育や就労、職業訓練に参加していない状態の若者を指します。精神医学的な観点から見ると、ニート状態にある人々の中には、心理的・精神的な問題を抱えているケースが多く、以下のような要因が関係していることが指摘されています。
1. ニートの精神医学的要因
(1) 精神疾患との関連
- うつ病
ニート状態が長引くと、無力感や自尊心の低下が進み、うつ病を発症しやすくなる。また、うつ病が原因で社会復帰が困難になるケースもある。 - 不安障害(社交不安障害など)
対人関係の不安や極端な緊張が原因で、社会活動への参加を避けるようになる。 - 統合失調症
幻覚や妄想が影響して社会参加が難しくなる場合もある。 - 発達障害(ASD, ADHDなど)
社会的な適応が難しく、職場や学校での不適応が続くと、結果的にニート状態に至ることがある。
(2) 心理的要因
- 学習性無力感
失敗経験が積み重なり、「何をやっても無駄だ」と思うようになる。 - 回避傾向
挫折やストレスを避けるために、働くことや学校へ行くことを回避する。 - 過保護・過干渉な家庭環境
親が過度に保護し、本人が自己決定する機会を失うと、自立の機会を得られずニート状態が続くことがある。
2. ニートの精神医学的アプローチ
(1) 心理療法
- 認知行動療法(CBT)
否定的な思考パターンを修正し、行動変容を促す。 - 対人関係療法(IPT)
社会的スキルの向上を目的としたアプローチ。 - 動機づけ面接(MI)
「働きたいけど動けない」という心理的葛藤にアプローチする。
(2) 薬物療法
- うつ病や不安障害が関与している場合は、抗うつ薬や抗不安薬を使用することがある。
- ADHDが関係している場合は、適切な薬物療法が有効な場合もある。
(3) 社会的アプローチ
- 就労支援プログラム(ジョブトレーニング、職業訓練)
- ピアサポート(同じ経験を持つ人同士の支え合い)
- 家族療法(親子関係の見直し)
3. まとめ
ニートの背景には、単なる「怠け」ではなく、精神医学的・心理学的な問題が潜んでいることが多い。そのため、適切な心理的支援や医療的介入、社会的支援が必要であり、単純に「働け」とプレッシャーをかけるのではなく、段階的なサポートが求められる。