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精神医学

アルコール依存症の生い立ち

アルコール依存症の生い立ち

アルコール依存症(アルコール使用障害, AUD: Alcohol Use Disorder) は、飲酒をコントロールできなくなり、心身や社会生活に悪影響を及ぼす状態を指します。
単に「酒好き」や「飲みすぎ」ではなく、脳の報酬系の異常や幼少期の環境、ストレスへの対処方法が深く関係 しています。


1. 遺伝的要因(生まれつきの脳の特性)

アルコール依存症には、遺伝的な要因が大きく関与しています。

  • 遺伝の影響
    • 親や祖父母にアルコール依存症の人がいる場合、子どもが依存症になるリスクが 約3〜4倍 高まる。
    • アルコール依存症の約50%は 遺伝的要因 が関係していると言われている。
  • 脳の報酬系(ドーパミン)の影響
    • 飲酒による快楽(ドーパミン分泌)が強く出やすいタイプの人は依存しやすい。
    • 「ストレスを感じたときにお酒を飲むと、すぐに気分が良くなる」→ この快楽を繰り返すうちに、飲酒が習慣化しやすくなる。
  • 衝動性が高いタイプ
    • ADHDや双極性障害のように、衝動をコントロールしにくい人はアルコール依存症になりやすい。
  • アルコール分解能力との関係
    • 日本人の中には、アルコール分解酵素が弱い人(お酒に弱い人)もいるが、その一方で お酒が強い体質の人ほどアルコール依存症のリスクが高い

2. 環境的要因(幼少期の家庭環境やトラウマ)

アルコール依存症は、育った環境や人生経験による影響も大きいです。特に、幼少期の家庭環境ストレスへの対処法の学び方 が関与します。

① 幼少期のトラウマ・家庭環境

  • 親がアルコール依存症
    • 幼少期から 飲酒が当たり前の家庭環境 で育つと、酒に対する抵抗感がなくなり、依存しやすくなる。
    • アルコール依存症の家庭では、暴力・ネグレクト(育児放棄)・感情の不安定さ が見られることが多い。
  • 虐待やネグレクト(育児放棄)
    • 幼少期に親から 暴力を受けたり、無視されたりした経験 があると、「心の痛みを紛らわすため」にアルコールを求めるようになる。
    • 愛情不足を感じた人は、アルコールを使って感情を麻痺させる ことが多い。
  • 過度に厳しい・抑圧的な家庭
    • 「勉強しろ」「いい子でいなさい」と厳しく育てられた場合、ストレス発散の方法を学べない。
    • 「お酒を飲むことで初めてリラックスできる」→ 依存しやすくなる。

② 思春期・青年期の影響

  • 10代での飲酒経験
    • 早い時期(10代)から飲酒を始めると、依存症になるリスクが高くなる。
    • 未熟な脳はアルコールの影響を受けやすく、依存の形成が早まる。
  • 学校でのいじめや孤立
    • 友達がいない、いじめを受けた経験があると、「アルコールで不安を紛らわせる」習慣がつく。
  • 初めての成功体験が飲酒だった
    • 「飲酒をすると楽しくなる」「人と打ち解けられる」といったポジティブな経験を早くするほど、依存しやすくなる。

③ 大人になってからのストレス要因

  • 仕事のストレス
    • 「仕事のストレスを解消するために飲む」 → これが習慣化すると、やめられなくなる。
    • 「お酒がないとリラックスできない」状態が続くと、依存症になりやすい。
  • 対人関係の問題
    • 恋人・家族との関係がうまくいかない とき、アルコールで気を紛らわせようとする。
    • 孤独感や見捨てられ不安が強い人ほど、依存しやすい。
  • うつ病や不安障害との関連
    • うつ病や不安障害を抱えている人は、「気分を良くするため」に飲酒しやすく、依存に陥りやすい。
    • 「飲むと気分が楽になるが、翌日さらに気分が落ち込む」→ これを繰り返すことで、アルコール依存症が進行する。

3. アルコール依存症の生い立ちの典型的なパターン

パターン①:アルコール依存症の家庭で育つ

  • 親が酒を飲んで暴れる、または親も依存症だった。
  • 幼少期から「お酒があるのが普通の環境」で育つ。
  • → 自然と飲酒を覚え、やめられなくなる。

パターン②:幼少期の虐待・ネグレクト

  • 幼少期に親から暴力や育児放棄を受けた。
  • 「生きるのがつらい」という感情を抱えながら成長する。
  • → お酒を飲むと、その苦しみを忘れられる。

パターン③:過度に厳しい家庭で育つ

  • 「真面目でいい子」でいることを強要された。
  • 失敗が許されない家庭環境で、ストレスを発散する方法がなかった。
  • → 成人してからお酒を覚え、依存しやすくなる。

パターン④:ストレスの多い職場・生活環境

  • 仕事のストレスや人間関係の悩みが多い。
  • 「仕事終わりの一杯」が毎日の習慣になり、徐々に量が増える。
  • → いつの間にか、飲酒がコントロールできなくなる。

4. まとめ

アルコール依存症は「単なる酒好き」ではなく、脳の神経伝達の異常や幼少期の環境が関係している。
親がアルコール依存症だった場合、子どもも依存しやすい。
幼少期の虐待・愛情不足・ストレス環境が依存につながることが多い。
仕事のストレスや人間関係の問題を「お酒で解決」しようとすると、依存しやすい。


5. アルコール依存症を克服するには?

  • 専門機関(AA:Alcoholics Anonymous)に相談する。
  • ストレス発散の方法を変える(運動・趣味・瞑想など)。
  • 家族や周囲のサポートを受ける。
  • 自分の過去や感情と向き合い、「なぜお酒に依存してしまうのか」を理解する。

アルコール依存症は 「意志の弱さ」ではなく、「心の傷やストレスへの対処法の問題」 です。
適切な支援を受けることで、克服することは可能です。

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