復職となると、ある程度の助走が必要になります。都道府県には「障害者職業センター」があり、そこで「職場復帰支援サービス」が行われています。通院先、会社の人事部との三者間で、職場復帰支援を行います。
具体的には、週3-5日ほど通所し、生活リズムの確認、ストレス対処の向上、コミュニケーション技術の練習、オフィスワークの訓練などを行います。その都道府県において同じような状況で休職している方々が集まり、復職へ向け一緒に取り組みます。
ただし、その対象にならない場合もあります。病気が十分改善していない場合はもとより、社会保険に加入されていない方(公務員、自営業、退職者等)、会社が利用を認可しない時、センターから遠距離の場合、サービスが混雑している場合なども相当します。
そこで、今回は一人でもできる職場復帰の練習方法をご紹介しましょう。まずは、規則正しい生活リズムを作ることです。それには生活行動記録表をつけることが有効です。記録をつけること自体が励みになりますし、記録を見直すことで、修正すべき点に気づきます。特に以下の事項にご注目ください。
・早寝早起き
・健康的な食事(低脂肪・高繊維)
・規則正しい服薬
・外出・散歩(日光浴)
・禁酒・禁煙(できれば)
規則正しい生活、健康的な行動が身に付いたら、通勤・勤務の練習もしてみましょう。はじめは、近所の喫茶店か図書館へ通ってみましょう。できれば、早朝・午前に行き、2-3時間ほど過ごします。コーヒーを飲みながら、新聞や雑誌から読みはじめ、小説や専門書へ段階的にステップアップします。半日(3時間)からお昼休み(2時間)をはさみ、一日(6時間)いられれることが目標です。週2-3日からはじめ、最終的に週5日を目指します。
これらは毎週、少しずつ伸ばし、変えていくことがポイントです。いきなり無理して挑戦しないようにしましょう。ともすると早く良くなりたいと思うあまり、急いでしまいます。以下にプランを例示します。これは2週おきにアップしてもよいですし、調子悪い時にはダウンしても、ストップしても構いません。大事なことはゴール=職場復帰ということを念頭において行うことです。
・第1週:月水金、近所の図書館、半日
・第2週:月~金、近所の図書館、半日
・第3週:月~金、近所の図書館、一日
・第4週:月~金、職場の図書館、一日
近所とは自宅より徒歩で行かれるところ、職場とは電車に乗り通うところという意味と同じです。電車に乗る際はスーツやネクタイをしていくと良いでしょう。特に平日、電車に乗るには会社員へ勤めている方々と同じような服装・行動をしてみることをお勧めします。はじめはラッシュアワーを避けて、空いている時間を選びましょう。最終的には実際の通勤時間を試します。
通勤は徒歩で行うことがお勧めです。地方で自家用車がメインの移動手段になっている方も、できる限り機会をみつけ、歩くよう心掛けて下さい。機序は不明ですが、適度な散歩は精神衛生、脳機能の向上に有効です。古来より哲学者や研究者は歩き回り、思索・思考をまとめてきました。万歩計を購入し、日々の歩数を記録するとなお良いでしょう。どの程度歩くと調子よいか調べることをお勧め致します。
作業に疲れたり飽きたりしたら、会話をしましょう。これも理由は不明ですが、精神衛生に有効です。できれば同じように休んでいる方や、かつて休んでいた方と、悩みを共有されると良いでしょう。問題は解決しなくても、苦しみは半減するものです。会って話せない時は、電話やメール、SNS, Social Network Service を利用しましょう。各種のSNSでは復職コミュニティが立ちあがってします。
以上、職場復帰の練習方法をご紹介しました。本来は実際の職場で調整を行っていただきたいものですが、職場の安全性、生産性、雰囲気などの理由から、「完全復帰」でなければ受け入れてくれない会社が増えています。そこで、ひとりでも行えるようなプランを提示しました。
急がず焦らず、確実に取り組まれることを応援しています。しかし、残念ながら思うように進まない時は主治医と相談しましょう。病気の症状、生活の環境、人生の方向など巡り、迷いはつきものです。どうぞお大事にして下さい。