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精神医学

「性依存」とは

「性依存」とは

性的行動のコントロールが困難となり、社会生活(会社・学校)・日常生活(家庭)において問題を生ずる状態と定義されます。

性的欲求を抑えられず、複数の相手と性交渉、頻繁な風俗通い、過度な自慰行為などを病態を「強迫的性行動症」、性的対象や性的嗜好を逸脱した病態を「パラフィリア」と定義します。強姦、強制わいせつも医学的には前記に分類されるでしょうが、これらは明らかな法律的に「性犯罪」として、厳罰の対象になりますので、医学・法律の双方が求められます。

プロセス依存または対人関係依存に相当します。いずれにおいても、脳内の報酬系;ドパミン神経回路の異常亢進およびセロトニン神経回路の低下により起きると考えられています。

個人により、遺伝素因により「社会常識」を認識できない「社会認知障害」という病態や、生育歴の問題から「認知の歪み(劣等感の代償など)」を生じ「性依存」に至る症例も認められます。

「依存」とは

「精神作用物質の摂取や、ある種の快楽を伴う行為を繰り返し行った結果、その刺激を求める『耐え難い欲求』を生じ、その刺激を求める行為が優勢となり、その刺激がないと『不快な精神・身体症状』を生じる、精神・身体・行動の症状」 WHO改変

「低い自己肯定感、自信喪失、人間不信、見捨てられ不安、孤独感・孤立感など不全感から辛い気持をまぎらわすための行為」 斎藤改変

「『心理的な苦痛』が依存症の中心問題であり、物質や行動が癒しをもたらすため、それらに頼らざるを得ない『自己治療仮説』」 松本改変

「『孤独感や無力感』による『生きづらさ』から、『人間不信』に陥っている時に生じやすい、そして他者との『親密性』を回避し、物質や行為に依存することで感情制御する、いわゆる『孤独の病』」 小林改変

嗜好 ➡️ 不安・孤独・無力 ➡️ 誘因 ➡️ 依存 ➡️ 反復・強迫;自己回避行動 ➡️ 依存症 🔁 共依存

脳内報酬系;Dopamine 神経回路

中脳;腹側被蓋野(VTA. Ventral Tegmental Area)活性化
腹側被蓋野→側坐核
      報酬を得た誘因となる行動が強化される

腹側被蓋野→前頭前野
      行動とβ- Endorphin(脳内麻薬)の放出が記憶される

脳内にてDopamineを放出する細胞からなる神経回路、運動、動機づけ、他者からの承認欲求などに関わります。しかし、依存症は依存物質・行動のの多幸感・陶酔感を忘れられず、依存物質の摂取、依存行動の反復を生じてしまいます•••

「強迫的性行動症」とは

  1. 特定の性的行動を行いないたいという強迫的な欲求、とらわれ、ファンタジー
  2. 特定の性的行動を行ってはいけないと、止めたいと分かっていても、抵抗できない、その行動が否定的な結果(逮捕、解雇、離婚など)を招くとしても繰り返してしまう
  3. 特定の性的行動の増加、多くの時間や労力を要する(物質依存の「耐性」)
  4. 特定の性的行動は重大な心理・社会的問題を引き起こす

有病率3-10%、ほとんど男性、男性ホルモンの影響によるだろう

リスクアセスメント
青年(25歳未満)
親密なパートナーと同居歴なし
性犯罪以外の粗暴犯罪歴もあり
血縁のない被害者がいる
顔なじみのない被害者がいる

「パラフィリア」とは

性的倒錯、性的嗜好障害、性嗜好異常など、具体的に、露出症、フェティシズム、窃触症、窃視症、小児性愛、性的マゾヒズム・サディズム、服装倒錯など

診断基準
1. 当人が自分の性的嗜好によって、心的葛藤や苦痛を持ち、健康な生活を送ることが困難である
2. 当人の人生における困難に加え、その周囲の人々、交際相手や、所属する地域社会などにおいて、他の人々の健全な生活に、社会的に受け入れがたい行動などを抑制できない

「性犯罪」とは

「同意しない」意思を形成・表明または全うすることが困難な状態にさせること、あるいは相手がそのような状態にあることに乗じ「不同意」の「性交・わいせつ」が成立した場合など(法務省)

性依存の有病率;3-10%(海外)との調査結果があります。日本は令和2年の犯罪白書(法務省)によりますと、「痴漢」にて年間3000人、「強制性交」にて年間1000人、「強制わいせつ」にて年間3000人、「公然わいせつ」により年間1500人が逮捕されています。

犯罪被害者は被害女性だけにとどまりません。「加害者の妻子」も含まれます。性依存者の約10%がこの問題から離婚に至っているため「家庭崩壊・育児困難」など生じます。

妻は泣き崩れ、うつ状態となり、幼少期・児童期にある子どもは、事態を知らされず、母子家庭に育ちます。そのような家庭、すなわち「機能不全家族」にある子どもは「逆境的・小児期体験、ACE. Adverse Childhood Experience)」を経るため、かつての「アダルトチルドレン」、昨今「複雑性PTSD」という病態に陥ることも少なくありません。

性依存症の多くは18歳未満に発症しますが、30-40代に最多となります。

男性ホルモンは18-20歳最高を示しますが、20代以降、性的体験を経て、性依存が顕著となり、問題や事件が深刻・顕在化するのは30-40代だからでしょう。

50代以降は男性更年期となり、同ホルモン減少に伴い、激減します。

再犯リスクも35歳まで高く、40歳を過ぎると下がります。60歳以降は激減します。

性犯罪・全体の再犯率;数%ですが、痴漢;40%、盗撮;30%です。なお窃盗・覚醒剤は60%ほどです。
しかし、適切な治療により再犯率;10-30%低下する調査結果が得られています。

最近主流となる治療法は「Stress Coping(ストレス対処)」「Relapse Prevention(再発予防)」です。「誘因をList Up」、それに対する「健全なCoping」を熟慮検討することです。

具体的に「痴漢」の再犯予防には

満員電車に乗らない
・お酒を飲まない

規則正しい生活を送る
・仕事や生活のストレスを溜めない
・例えば好きなスポーツを行う
・好きな音楽を聴く

・男性の友人とこれまで通りつきあいつつ
・女性の友人とは「こころのつながり」を大事にする

毎日日記をつけ、自分の気持ちを振り返る等など

依存治療における4本柱

1. Harm Reduction
危害低減、本人および周囲の人々が依存行動の危害から速やかに回避されるよう努力すること

2. Medication
薬物療法、行動依存においても、有用な薬物があれば積極的に用いる

3. Psycho-Socio Therapy
認知行動療法、ストレスコーピング、治療共同体
感情調整・衝動制御・行動抑制/認知・思考訓練

4. Self Help Group
当事者による能動的な治療に優るものなし

問題克服への個人の責任/依存への個人の責任

モラル・刑事司法モデル
 依存は犯罪
 対処=強い意志
認知行動モデル
 依存は不適切な学習
 対処=認知行動療法
スピリチュアルモデル
 依存は罪
 対処=自助グループ
医療疾病モデル
 依存は病気
 対処=治療 

SA Japan. Sexaholics Anonymous Japan

SA Japan とは「経験・力・希望を分かち合い、共通の問題を解決し、性依存症から回復するように手助けしたいという共同体。

SAのメンバーになるため必要なことは一つ、性的な渇望を止め、「性的しらふ」になりたいという願いのみ。

会費も料金も要らない。私たちは献金だけで自立している。SAは、いかなる宗教、政党、組織または施設、団体にも関与しない。また、どのような論争・運動に参加せず、支持も反対もしない。

私たちの本来の目的は「性的しらふ」になることであり、他の性依存症者も「性的しらふ」に達するよう手助けすること」です。

www.sa-japan.org

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