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小説

かわいい男の子


小児性愛症 (15.3/ICD-11)
俊和(としかず)は58歳の某大手・玩具会社を3年前に出向、某玩具工場の取締役として、これまで同様に活躍していた。家庭は妻55歳、長女26歳・次女24歳のいる二児の父である。仕事も家庭も円熟し、なに不自由ない生活を送っていた。妻とは結婚30年以上となり、性生活はなかったが、仲良く暮らしていた。娘二人は成人・就職し、後は結婚するのを待つばかりだった。周囲からは理想的な人生と思われていた。


しかし、俊和は他人へ言えない「性癖」があった。10歳前後の男児に性的興奮を覚えてしまった。それを自覚したのは35歳頃からだった。結婚し、娘二人が誕生し、家庭を築きはじめていた頃だった。俊和は玩具メーカーに勤務していたため、商品を開発するたび、モニターとして子ども5-10人を招き、商品で遊んでもらい、改善点を探っていた。子どもは当初、社員の子どもで十分、間に合ったが、次第に少子化も伴い、街中で母親に連れられた子どもを探し、母親に声かけることにより集めた。


俊和は娘二人がいたものの、息子はいなかったため、男児が珍しかった。また自分の幼少期に重ねるところもあり、思春期を迎える前の男児とも女児とも言えない「中性的」な子どもを探した。俊和も幼少期は「中性的」で、女児と間違われる時のよくある「かわいい男の子」だった。母や姉から溺愛され、母と一緒に街中へ出ると、成人女性から「かわいい」「女の子みたい」とよく言われた。はじめは自分は「男の子」だと不快に感じたが、言われ続けると「そうなのかな」と自分の姿を鏡で見るようになった。


「かわいい男の子」だった俊和も、14-15歳になると立派な「男子」になった。身長は20-30cm伸び、体重も10-20kg増え、もはや「かわいい」とは言われなくなった。その代わり「かっこいい」と言われるようになり、高校大学時代はそれなりに「女子」からモテ、青春を謳歌した。大学3-4年次、就職先を決めるにあたり、「なぜか」玩具会社に魅かれた。これから少子高齢化を迎えると言われ、玩具会社の将来は明るいと言えなかった。それでも、玩具とたわむれている「男の子」が何度も思い出された。そして、周囲の助言を振り切り、某大手・玩具会社へ入職した。


入職後、仕事に熱心で、新しい玩具の「開発」に並々ならぬ情熱を注いだ俊和は同期はもとより、先輩も抜いて出世した。「開発」において、彼が活躍したのは、従来の商品に現代の技術を取り入れ、「子ども目線」で「子ども」と一緒に楽しんだからだった。彼は自ら志願し「男児向け」の商品開発に配属された。そこで、モニターとして集めた「男の子」と一緒に「童心」に戻り「我を忘れ」遊び楽しんだ。その結果、現代の「男の子」の求めているものを、見事にキャッチ・アップした。


ここまでは良かった。俊和の「あやまち」はモニタリングの途中または終了後、特に気に入った5-10歳の「男の子」を別室に呼び出しもてあそんだ。彼にとってはかつての「自分」とたわむれるようだった。まだ成長していない「男の子」の身体をなでまわし、最後に「男の子」の小さな「局部」を口に含んだ。男の子たちはさすがに「いけない」ことをされていると感じたが、怖くて「嫌」と言えなかった。また、なでまわされることに快感を覚え、「局部」が男児ながらに肥大したことに戸惑いを覚えた。最後に俊和から「ママには内緒だよ」と指切りされ、特別な玩具を手渡されると、確かに何も言えなかった。たいてい行為は1回きりで、「男の子」たちはその「行為」を自然と忘れるか、思い出しても無理に忘れようと努めた。


俊和の「あやまち」否「犯罪」が表立ったのは、令和5年8-9月のことだった。某・大手芸能会社における、少年への性加害事件が明るみとなり、マスコミ報道が過熱したのをきっかけに、かつての「男の子」だった成人男性が、自らの性被害・トラウマを思い出し、時にフラッシュ・バックを生じるようになった。そして精神科医や弁護士へ相談、俊和へ訴訟の準備をはじめた。俊和はもとより、妻と娘二人のショックは激しかった。妻はうつ病になり、娘二人は家を出た。事態はまだ進行中である。被害者らは、某・大手芸能会社の事件に歩調を合わせるつもりである。


小児性愛 Pedophilia
少なくとも6か月以上、13歳もしくは、それ以下の小児へ対し、繰り返し強い「性的衝動」を覚えること。小児性愛者は16歳以上、被害に遭う小児より少なくとも5歳以上年長であるとされている。加害者が青年・成人期に至り、被害者が12-13歳の場合、この診断を満たさない。小児性愛の主な内容は、性器愛撫と口唇性交である。被害者の多くは女児とされるも、実際は6割以上、男児となっている。

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